親である私たちは、子どもの一番の理解者でありたいと願っていても、知らず知らずの内に、子どもにとってひどい親になっていたりするのかも知れません。
特に家庭内という密閉された空間では、子どもは親の影響を強く受けます。
今回ご紹介する本「犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉」では、子育て・教育において「これをやれば必ずうまくいく」という成功法則はないが「これをやってしまうとだいたい問題が起きる」というものはあると書かれています。
「犯罪心理学者が教える」と書かれていますが、非行少年を診てきてた先生だから分かる、誰もが陥りやすい子育てを知ることができる、気付きがある本だと思います。
- 犯罪心理の本というより、子育ての本です
- 子育てで大切なことが詰まっています
- 非行少年の事例を元に説明されている
- 心理用語が分かりやすく解説されている
- 親が良かれと思っていた言葉が子供を苦しめていることもある
- 子育てに悩む人に読んで欲しい
犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉
著者は1万人を超える犯罪者・非行少年の心理分析をしてこられた出口保行先生です。テレビにも出演されている先生です。
子どもは親が思う以上に親の影響を受けていることが分かります。
レビューの評価も高い本です。
呪う言葉
呪う言葉というのは、親の言葉の中に【思い込み・個人的な価値観・一方的な押し付け・親の都合】があって、子どもを苦しめているという意味です。
- よかれと思っては、親の自己満足
- 主観的事実、確証バイアス、夫婦で話し合う大切さ、子どもに説明する大切さ
- 「みんなと仲良く」は個性を破壊する
- 心の距離の取り方、家庭の中の刑務所化、短所=長所、ダメ出し&フォロー、センセーション・シーチング
- 「早くしなさい」は先を読む力を破壊する
- 事前予見能力、内観療法、ソーシャルスキルトレーニング、本を読む大切さ
- 「頑張りなさい」が意欲を破壊する
- 意欲の高め方、学習性無力感、スモールステップ学習、マズローの欲求の5段階、アンダー・マイニング効果、レジリエンス
- 「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する
- 自己肯定と自己中心、行動観察、自己効力感
- 「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する
- 拡大自殺、ブーメラン効果、スモールステップ学習
- 「気を付けて」が共感性を破壊する
- 共感性、合理化の心理、道徳性、反省ではなく内省、ロールレタリング、サイモンズの4類型、ヘリコプターペアレント
それぞれに非行少年の事例が紹介されていています。
心に残ったことを書いていきます
子どもにとって大事なのは主観的事実
大事なのは子どもの主観的事実です。どんな言葉を使うかも大切ですが、子どもがどう受け止めているかに配慮しているかどうかも大切なのです。
引用:言葉は受け手によって180度変わる
親はいくら客観的事実(正論)を言ったとしても、子どもは主観的に受け止める。そして子どもにとっては、この主観的事実が大事ということです。特に子どもは理性より感情が優先されるのでしょう。
私も注意したつもりが「怒られた」と捉えられたり、手伝ったつもりが「勝手にやった」と捉えられることは何度もあります。
子どもが「どう受け止めたか」に無自覚ではいけないということですね
子どもに説明する大切さ
子どもが小さいと「話しても分からないだろう」と思うかも知れませんが、そんなことはありません。もちろん細かい理屈は分からないでしょう。でも言わんとしていることは分かりますし、何より、きちんと自分に向き合おうとしてくれることを感じ取り心から安心します。きちんと説明してくれているということが大事なのです。
引用:方針を修正するときに大事なこと
昔、病院で開かれた親講座に出席したときに同じような話を聞きました。
障害がどんなに重くても、その子に伝わる方法で因果関係を説明してあげてください。親が良かれと思って選んだ場所であっても、説明もなく子育てをし続けた結果、子どもに不満が溜まり、大人になって家庭内暴力になっているケースがあります。
親への不信感→社会全体への不信感や疎外感へ つながっていくと書かれていました。
子どもの心が離れていくのを
気づかない親になるのは避けたいです
きれいごと教育は不信感につながる
「みんなと仲良く」「嘘をつくな」は大人もできない。ただのきれいごと。みんなと仲良くは「個性を抑えろ」というメッセージになる。
合わない人に合せる必要はないし、仲良くする必要もないのです。これは「差別をしてはいけない」とは別の話です。
引用:「みんなと仲良く」と「差別しない」は違う
「きれいごと教育」の問題点は、それを言う大人ができていないのだから、不信感につながるということです。
最近読んだ本が人間関係を教えるのにも役立ちました。
私は、特性のある子どもが学校を休みがちになった場合の対応として「逃げる」「あきらめる」「割り切る」という三段階の方法があると考えています。(略)クリニックに通う子の中に1人「割り切る」考え方ができる子どもがいます。(略)
彼はしばらくの間は学校に行きませんでしたが、その間に対人マニュアルを作っていました。学校で関わる人を「好きで気が合う人」「普通の人」「苦手な人」に分けて三通りのマニュアルを作ったというのです。学校ではそのマニュアルに沿って人と接し、行動すればいいと、自分なりに「割り切った」のです。
引用:発達障害の“二次障害”を理解する本
この考え方、大人は自然とやっていることですよね。でも、子どもは「みんなと仲良く」と言われているから、気付けないことも多いと思います。
特に発達障害のある子は、言葉通りに「みんなと仲良く」に縛られている子もいるのかも知れません。
hakuには「嫌いな子がいてもいいんだよ」とは話していましたが、分類する教え方はいいなと思いました。
本書でも心の距離について書かれています。
こういう生きる知恵を教えてあげることが必要だなと思いました。
「先を読む力」はトレーニングが必要
「早くしなさい」子どもにこのような急がせる言葉を言ってしまう人は多いと思います。しかし小さい子どもはみな事前予見能力が育っていませんから、なぜ急がなければいけないのか分かりません。
この事前予見能力は生まれながらに持っているものではなく、発達の中で身につけていくものです。
引用:「早くしなさい」はなぜダメなのか
そうだったんですね。自然と身に付いていく人も多いかと思いますが、できない人もいるのでしょう。トレーニング法も書かれていました。
hakuもこの能力は乏しいと思います。
意欲は焚きつけない
「頑張って」は「意欲を持て」という意味で使われることがある。意欲は自分の内側から出てくるもので、他者が植え付けることはできない。
意欲は焚きつけて出るものではない、ただ漠然と頑張ることを要求されても、子どもはどうしていいかわかりません。
大人も同じですよね
心理学の実験の話が考えさせられました。
以前紹介した篁先生の本でも、褒める→満足感→自信→意欲につながると紹介されていました。観察の大切さ・失敗する権利など、本書と同じようなことが書かれています。
感情をぶつけても解決しない
わが子への期待と思い通りにいかないストレスから「何度言ったらわかるの!」とキレてしまう。こういった感情を爆発させてしまうメッセージは、親のストレス発散になるかも知れませんが、問題は解決しないどころか、子どもの自己肯定感を下げてしまう。
- 子どもがきちんと理解できる伝え方をしているか
- 子どもに対し「こうあるべき」という思い込みがないか
- 親自身が安心したいとか親の都合が隠れていないか
確かに無意識にあるのかも知れません。気を付けないと。
日本人の自己肯定感の低さと、13~25歳の青年期の親のサポートのところは特に勉強になりました。
「勉強しなさい」は勉強しない
「勉強しなさい」にはブーメラン効果がある。人は強制されると意識的にも無意識的にも自由を求めており、自由が侵害されたと感じる。ブーメラン効果とは、相手を一生懸命説得するほど反発が起こって逆の行動を導いてしまう現象。
親は気になったことばかりを心配で言ってしまうのかも知れません。子どもとしては反発したくなるのもわかります。特に思春期の子には無理なこと。
勉強のつまづきに対する対処法も書かれていました。
言い訳をさせる
子どもの「私は悪くない」などの自分を正当化する言い訳をすることは良くない事とされていますが、子どもの言い訳は自分の心を落ち着かせるためにやっていることが多い。言い訳を否定せず、とことん言い訳を聞いてあげて、本人が矛盾に気付くことが大事と書かれています。
言い訳をさせる。目から鱗です。
子どもは思っていることの1%も口に出せない
子どもは思っていることの1%も口に出せない、だから保護者や教師は常に子どもを観察して何か異変が起きていないか確認することが大切。
子どもが助けてと言った時は、既に事態の深刻さは回復が難しいところまで来ている
引用:グレずにすんだ「教師の子」
この言葉刺さりました。
hakuは2回不登校になったのですが、私が学校で起こっている事実を知った時には、既に「学校に行かない」と心を決めてしまって修復不可能でした。困ったことがあっても、我慢したり隠してしまう子なので、異変に気付くのが本当に難しい。
専門家に相談できます
子どもの問題行動・非行などは、少年鑑別所の専門家が培ってきた知識や技術を活用した、地域社会の非行・犯罪防止のための相談窓口があるそうです。
全国都道府県で無料で、面接・電話・メール・オンラインでも相談できるようです。
まとめ
今回は犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉を紹介しました。
ごく一部しか紹介できませんが、他にも考えされられる内容がたくさん書かれていていました。
むかし「ケーキの切れない非行少年たち」を読み、その後NHKのドキュメンタリーで取り上げられてから、非行少年の中には、発達障害や知的障害の子が結構な割合がいると知り、衝撃を受けました。
発達障害・知的障害のある子が支援のない環境・理解のない環境で育った結果、非行少年となっている場合もあるというのです。
今回の本は、発達障害の子の話は出てきませんでしたが、発達障害に関わらず(発達障害の子もいたかも知れませんが)子育てに対して気を付けることを教えてもらいました。
子どもに異変が起こっていないか気にかけ、過保護・過干渉にならずに、コミュニケーションを取っていきたいです。