障害のある子が勉強をするとき、普通の子と同じ学習では理解できないことも多いかと思います。
今回紹介する「特別支援教育はじめのいっぽ!」は、主に発達障害のある子が在籍している学級の先生向けのアイデアが載っている本です。
学校の先生向けに書かれていますが、親である私が見ても参考になることが多かったです。何か学習のヒントが欲しいと思っている方には役に立つ本だと思います。
特別支援教育はじめのいっぽ!シリーズ
特徴
学研プラスから出版された、特別支援・個別支援の勉強のアイデアの実例が載っている学校の先生向けの本です。特別支援教育に詳しくない先生方のために書かれています。
子どもの抱える困難の背景に着目した、学級担任のための特別支援教育入門書。支援の実例満載で、授業にどんどん取り入れていける。付属のCDで即チェック・支援シートを作成し、豊富なデータベースからその子に合った支援のアイデアを選べる。
引用:学研プラス
- CD-ROM付きでPDFファイルとWordファイルで
- CD-ROMはタイプ別で支援のヒントが表示される
- すぐに使えるデータが入っている
- 支援手順や方法が実例・写真で解説されている
- 特別支援教育の基礎的なアイデアが載っている
- 家庭や個別学習で良さそうな教材
- 二次加工できるが、微調整は難しい作りになっている
きっかけ
支援学校に通うhakuには普通の子と同じような勉強は必要ありません。それよりも日常生活をなるべく自立できることの方が大事です。しかし、日常生活で必要な簡単な計算や読み書きができるのなら、教えてあげたいと思っていました。
支援学校では、勉強面の授業は個別に行われています(生活単元学習や課題学習の中で)。しかし時間が短いのと、障害があるので定着させるために、家でも復習的な学習をさせたいと考えていました。
また就学前から家庭療育を行っていたので、学習する習慣が身に付いていました。この習慣を就学と同時に終わらせるのは勿体ないと思っていました。
何か「特別支援教育のアイデアがあれば私も教えられるかな」と思っていた時に、この本を知りました。
シリーズの本を紹介していきます
改訂版
このシリーズが出版されたのは、2008年から2014年ですが、改訂版として2021年に新しい本が出ました。
この改訂版は、2008年発行の初版「はじめのいっぽ!」に、最新の教育事情や教育環境に応じた新たな指導アイデアや知見を加えたものだそうです。
はじめて買う方は改訂版を。
各書の紹介と私が参考になったことを書いていきます
はじめのいっぽ!
国語と算数のアイデアも書かれていますが、課題や言語の提示方法・教室環境・自己コントロールの工夫が多く書かれいます。
私は改訂版を持っていないので旧版の説明をします
改訂版を買う参考にしてください
困難の背景を予想した支援例
- 目からの情報処理の困難
- 課題のどこに注目してよいかが分からなくなりがちなAさんへの支援例
- 視覚的混乱を減らすための支援
- 耳からの情報処理の困難
- 忘れ物、失くし物が多く、いつも注意されているBさんへの支援例
- 一斉指導の場面での支援
- 自分で確認できる支援
- 衝動性の困難
- 課題に落ち着いて取り組めないCさんへの支援例
- 自己コントロールを助ける支援
- 推し量ることの困難
- 指示されてもなかなか課題に取る掛かることのできないDさんへの支援例
- 見通しを持たせる支援
- 意味理解を助ける支援
- 動きの困難
- 手先が不器用で、ものさしでうまく線が引けなかったEさんへの支援例
- 動きの困難を補う支援
- 動きを意識づける支援
- 感覚の困難
- 偏食が激しく、給食の時間によくトラブルを起こすFさんへの支援
- 周囲の理解を進める支援
- 苦しくなる前の支援
- 算数の授業例~繰り下がりのある引き算~
- 指示の理解が難しいGさんへの支援
- Gさんへの個別学習支援計画
- 国語の授業例~助詞「は・へ・を」の指導~
- 注意がそれやすいHさんへの支援
- Hさんへの個別学習支援計画
- CDーROMの構成と使い方
CD-ROM
CD-ROMを入れると左のファイルが開きます。
「index」を開くと4つのタグがあって、それぞれに本書の内容やワークを検索することができます。
HOME | 場面別に検索 | 背景の予想別に検索 | ワークシート | |
- HOME
-
①97項目のチェックリスト
②集計グラフ
③困難の背景に即した支援シート - 122のアイデアシート
場面別に検索 -
- 国語:音読・読解・書字・言葉のルール・作文のルール
- 算数:数・操作・計算・意味理解・その他
- 共通:課題提示・言語指示・教室環境・その他
- 動き:手先・体全体の動き
- コントロール:補助する・自己調整力を高める・見通しを持たせる・その他
- 周囲との関係:集団のルールの利用・支援者の役割・特性の理解
- 122のアイデアシート
背景の予想別に検索 -
目からの情報処理の困難
耳からの情報処理の困難
衝動性の困難
推し量ることの困難
動きの困難
感覚の困難 - ワークシート
使ってみて良かったところ
私が当時使って特に役に立ったものです。障害の軽いお子さんならもっとあると思います。
- 拗音・長音プリント
- 助詞の読み替えルールを示したシート
- 句読点の使い方シート
- 音読をかたまり(単語)で読む方法
- 書き始めにマス目のどこに始点をおくか迷いをなくすアイデア
- 書く場所が分かる【足し算・掛け算・割り算】筆算シート
- 掛け算の意味を具体物の操作を通して学ぶ方法
- 位に合わせて書く場所が意識できる位取り表
- 算数文章題の場面把握
特にhakuは書く場所が分かる筆算シートは、どこに数字を書けばいいのか視覚的に分かって喜んでいました。これだけでも買って良かったと思っています。
視覚支援の方法がたくさんあると学べました
国語のじかん
通常学級での実践事例
- 注意・集中の困難が予想されるケース
- 「助詞変化のルール」を絵と言葉で確認する支援
- 視覚・注意・記憶の困難が予想されるケース
- 「日記で漢字名人」により確認する手立てを持たせる支援
- 耳からの情報処理と衝動性の困難が予想されるケース
- 拗音が抜けたり、表記の仕方を間違えたるする子どもへの支援
- 目からの情報処理と動きの困難が予想されるケース
- 形を整えて漢字を書くことが苦手な子供への支援
- 目からの情報処理と耳からの情報処理の困難が予想されるケース
- 漢字を正しく書くことが苦手な子どもへの支援
CD-ROM
- 取り組む学習から探す
-
- レディネスを培う
- レディネスとは、子供の心身が発達し、学習する際の基礎条件となる一定の知識・経験・身体などができあがっている状態
- ひらがな・カタカナを書く
- 漢字を書く
- 文章を書く
※「読み」に関する教材シートはありません
- レディネスを培う
- 困難の背景で探す
-
- 目からの情報処理の困難
- 耳からの情報処理の困難
- 目・耳からの情報処理の困難
- 他
-
- テストに関わる支援
- 意欲に関わる支援
- 一覧で探す
使ってみて良かったところ
- 「ソ・ン・シ・ツ」の書き方の区別
- 促音の理解・プリント
- カタカナ間違い探し
- よみがなテスト
- 送りがな確認
- 文章を書くプリント
本の中で、市販の特別支援に使える教材がいくつか紹介されています。私が使って良かったものです。
算数の時間
数から加減乗除・九九・少数・分数までの学習の工夫が紹介されています。
通常学級の算数の支援教材を活用した実践事例
- 指示の理解が難しい子どもへの支援
- 繰り下がりのある引き算
- 数と計算1年
- 意味理解が苦手な子どものための支援
- 通常学級と通級指導教室の連携・2年掛け算の単元を通して
- 数と計算2年
- 細かな目盛りを読み取ることが苦手な子のために
- 量と測定2年
- 計算の定着が進まない子のために
- 数と計算1年
- コンパスの操作が苦手な子のために
- 図形3年
CD-ROM
- 算数の領域別に探す
-
- 数と計算
- 量と測定
- 図形
- 数量関係
- 困難の背景で探す
-
- 目からの情報処理の困難
- 耳からの情報処理の困難
- 衝動性の困難
- 推し量ることの困難
- 動きの困難
- 学年で探す
-
1年 2年 3年 4年~
使ってみて良かったところ
hakuは算数が得意な方なので、こういう視覚支援があればスイスイ理解できるんだと分かりました。耳がいいので九九は「九九の歌」を聴いて耳コピで覚えていましたが、九九の考えはこの本で教えました。この本のおかげで加減乗除も理解できるようになりました。特に役立ったものを上げてみます。
- 繰り下がり引き算手順カード・練習プレート・プリント
- 1000までの数
- 大きな数
- 位のきまり
- 筆算用紙
- 掛け算わかるぞシート
- 九九表
- 掛け算筆算シート
- 割り算筆算シート
- 小数点はどこ
hakuにはすごく良かったです
漢字の時間
漢字をイラスト・ゲーム・ヒント付きテストなどで目や口、体をつかって楽しんで覚える指導法です。
漢字は「読み」をマスターしてから「書き」へ
第1章・2章のところで漢字を本当に理解するとはということについて説明がなされ、3章では指導手順がステップ形式で「読み方」「書き方」ごとにそれぞれ書かれています。
漢字は「読み」をマスターしてから「書き」に移ることが基本だけど、実態は逆で「読み」の指導は短時間で終了し、書くことに時間を割いて指導している。漢字を正しく写せる子どもが、実はその漢字を読めていなかった事例もあるそうです。
「読み」が確実にならないまま書き方を練習しなければならない子どもは、自分が何の字を書いているのかもわからないまま、ただ文字を書き写すだけの学習になってしまっていることもあります。このような学習方法では、子どもたちの漢字の読み書きの定着を図ることは難しいと思います。
引用:3章読み方指導プログラムp28
- 一度教えられただけでは、なかなか読みを覚えられない
- 書き順を覚えられない
- 文字の形が整わない
- 始点や終点がわからない
- 運筆の方向が分からない
- 「とめ・はね・はらい」がうまくできない
- 惜しい間違いをする
- 線の突き抜け・線の数が多い・点の向きが違う
- 漢字をパーツに分解できない
- 文字を書くのにとても時間がかかる
- 繰り返し練習しても覚えられない などなど
- 漢字嫌いにしない
- 漢字を学びたいという意欲を支える
- 漢字の読み書きができるんだという自信につなげる
- 正しく、繰り返すことで確実に学ばせる
- 楽しく取り組むことで定着させる
1年間を通した丁寧な漢字指導が積み重ねられることを願っています。
引用:2章指導プログラム柵瀬うの趣旨と構成
漠然と漢字をドリルなどを使って書かせて教えればいいと考えていましたが、それだけでは定着しないと気付きました。
- 指導事例
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- 特別支援学級での漢字の「読み方」指導
- 通級指導教室での漢字の「書き方」指導
- 通常学級での宿題としての漢字学習
CD-ROM
- 読み方で探す
-
読み方指導プログラム
- 書き方で探す
-
書き方指導プログラム
使ってみて良かったところ
- 漢字の学習法が学べたこと
- 漢字マッチング
- 絵カード・漢字カード・文字と文カードなどカードを使ってゲームができる
- 書き順補助カード
- 漢字の間違い探しゲーム
- なぞり書きプリント
- 書き順補助カード
丁寧な指導法です
まとめ
はじめのいっぽ!シリーズをご紹介させていただきました。
アイデアが欲しいのは、先生も親も同じですね。
お子さん学習が上手くいくために、参考にされてみてもいいと思います。