お子さんの偏食に悩まれている方も多いと思います。私も娘の極端な偏食には心配と苦労が絶えませんでした。今も完全に偏食が治ったとは言えません。
今は小さいときの極端な偏食よりは、食べれるものが増え、周りからは偏食とは分からない子どもになりました。
当時の私は本当に悩んでいて、私と同じように自閉症の偏食に悩んている人からの話を聞いてみたかった。そしてそこから何か参考にしてみたかった。その昔の自分に対してこんな人もいるよという感じで書いてみたら、誰かの参考になるかも知れないと思ったのです。
ですから、あなたのお子さんに当てはまるか分かりません。1例として何か参考になれば嬉しいです。
娘の偏食の経過
断乳から始まった偏食
娘は赤ちゃんの頃、粉ミルクを飲ませても、それほど飲みませんでした。だけど母乳ならごくごくと飲む。1才で卒乳しようと考えましたが、ちょうどその頃から睡眠障害が出てきて、添い乳をしないと寝付けなくなってしましました。
2才の時に、感覚過敏から歯磨きをさせてくれなかったのもあって、虫歯ができました。そして母乳ならではのトラブル(乳首が切れる、乳腺炎)が何回も起こり、断乳せざるを得なくなりました。
その前から離乳食は食べてはいましたが、主食になるほどではなかった。
当時は、バナナ・一部の離乳食しか食べていませんでした。
偏食とこだわり
娘のこだわりは1年くらいで変わっていきます。それと同じく食べるものも数カ月単位で変わっていきました。
バナナ/ジャガビー/ふりかけご飯のフリカケだけ/メーカー指定の南部煎餅(ごま味)/マルちゃんの3食焼きそば
他にもあったかも知れませんが、思い出せません。
小学校入学時は、給食は食べられませんから、焼きそばを弁当箱に入れて学校へ通っていました。
突然の入院
小1のとき娘は溶連菌に感染しました。その前にも感染したことはありましたが、この時は状態が悪化して何も飲食できなくなりました。主治医のいるクリニック(発達+小児科)で点滴を打ってもらいましたが、先生に「今日何も食べなければ、明日には大きな病院に入院することになるよ」と言われました。
当時は焼きそばの時代でしたから、具合が悪いのに食べられるわけがありません。次の日、先生に紹介状を書いてもらい、入院することになりました。
当時は癇癪もパニックもあったのですが、具合が悪く動けなくなっていた娘は、言われるまま素直にレントゲンを撮ったり、検査を受けていました。本人も辛かったと思います。
担当の小児科医との話
担当の小児科医の先生は、発達に詳しい先生ではありませんでしたが、自閉症と偏食のことを説明すると「今のままでは今後も同じことが起きる」と真剣に娘のことを考えてくださいました。
- 味覚異常なのか
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先生は自閉症の偏食がどれほどのものか分からないけど、今までの食事を聞く限り、必要な栄養素が取れているとは思えない。味覚過敏は味覚異常で起こっているかも知れない。味覚異常は栄養不足で起こる場合もあるから、試しに栄養補助のジュースを病院で取り寄せるから、それを飲んでみないかと提案されました。
確かに必要な栄養素が足りていないと、味覚異常が出るって話も聞いたことがあるので、飲んでみることにしました。飲ませてみると娘は気に入ったようで、食事はせずにジュースを飲んで過ごしました。ハイカロリーで必要な栄養素が入っているジュースです。
退院後
1週間ほどの入院でした。
- 療育の先生の話
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退院後、以前から予約していた個別療育に行きました。ST先生に今回の話をすると、味覚異常は聞いたことがないけど、環境の変化で偏食が改善するという話は聞いたことがあります。旅行や施設入所などで、と教えてもらいました。
- 学校の先生の話
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退院後に、先生と話をしたところ「これを機会にお弁当ではなく給食にしませんか?」と。環境の変化の後だし、栄養補助のジュースも飲んだし、可能性はあるかもとお弁当はやめました。
そして登校の日。その日の給食はラーメンでした(今思うとこれが良かったのかも)。先生からは「普通に食べていましてよ!」でした。時が止まりました。
- 主治医の見解
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その後の主治医の先生との話でも、味覚過敏と味覚異常がつなかっているとは思わないけれど、環境の変化が一番大きいと思うとおっしゃっていました。
そこからは、極端な偏食はなくなったのです。
娘の偏食の原因
偏食が改善したのは、味覚異常だったのか環境の変化だったのかは、もしくは両方が必要だったのか私には分かりません(一般的に亜鉛が不足していると偏食になりやすいようです)。しかし、その後から今のまでの娘を見ていると、偏食の原因と思えるものがいくつか分かりました。
味が混ざるのがダメ
味覚過敏のある娘は味が混ざるのがダメでした。なのでいわゆる三角食べ、四角食べは今でもできません。なので、フランス料理のように1品1品食べます。それも自分の順番があるようです。サラダ→味噌汁→ご飯→主菜だったかな?
丼ものも苦手です。牛丼などは、別の皿にご飯と上の具を分けて出すと食べられます。
かなりの猫舌
ラーメンやうどんを食べるときに「熱い」と言うので、ミニ扇風機を使って冷ましながら食べています。常にスタンバイしています。ご飯も冷や飯が好きですし、炊き立てご飯は扇風機で風を当てながら食べています。
今思うと、あの言葉がなかった時期に食べなかった原因の1つに猫舌があったと思っています。
今は画像のように扇風機で冷やしながら食べています。でも「冷やしうどん」は食べないんですよ。
食感の問題
過敏さがあるので、食感の好き嫌いがあります。
パンなどのボソボソしたもの、きのこ類のにゅるっとした感触、刺身など生のもの、固いアイスなどは食べられないようです。
ご飯よりも麺が食べやすいようです。
焦げたものは苦い
たまに料理を焦がしてしまうことがありますが、焦げは苦くて食べられないと言います。なるべく焦がさないように気を付けています。
スパイスは辛い
コショウや黒コショウ、薬味類は「辛い」と言って食べないので、なるべくコショウは使わないようにしています。
大皿料理は食べられない
自分の食べれる量が分かっていないのもあって、大皿で取り分ける料理は苦手なようです。給食のようにプレートに乗せて、自分が食べる料理が分かるようにしました。
味の記憶が正確
カレーライスは水加減や煮込み具合によって味が変わってしまうため、家のカレーは途中から食べられなくなりました。給食やレトルト、お店のカレーは食べることができます。それだけ、美味しい味を正確に記憶できるのだと思っています。これ以上食べられなくなるものを増やしたくはないので、なるべく同じ味になるように工夫しています。
食器へのこだわり
サラダはこのお皿、ご飯はこの茶碗と、食器と料理がつながっていて、たまに間違えて出すと「これじゃない」と言われていました。今は違うお皿に入れても何も言われなくなりましたが、いつも同じお皿が安心するのでしょうね。
好きな物を食べられる日を作る
食事は楽しく味わって食べて欲しいと思っています。娘はご飯より麺派なので週2日、曜日を決めて麺料理の日を作りました。この日があるから、ご飯も魚も頑張って食べているようです。
他の偏食さんの話
- 給食は牛乳だけ
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学校入学に当たり、偏食の話をすると牛乳しか飲まない人もいますから、大丈夫ですよと言われました。
- 野菜ジュースを飲む
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野菜を全く取らない人もいて、お母さんに聞くと野菜ジュースを飲ませていると教えてもらいました。
- ビタミンサプリ
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ジュースが飲めない人はサプリを飲ませているという話も聞きました。
- 栄養補助食品
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さきほどの小児科医の先生の話で出てきた、ハイカロリージュースなどの栄養補助食品もいいかも知れません。ジュース以外にもゼリーなどもあり、味も沢山あるようです。
森永・味の素・明治・アサヒ・ネスレなど各社から色々出ています。
これを使っている人もいました。
偏食指導の問題点
でも、極端な偏食の場合、何とか頑張って食べさせたい。ですが、そうすると変なこだわりができてしまうこともあると、40年以上自閉症の人を見てきた先生の話です。
ある幼児の通園施設で徹底的な偏食指導をしているところがあります。子供さんを仰向けに寝かせて鼻をつまんで口を開けて給食を無理やり入れます。子供さんが拒否して吐き出すと「あなたの口から出したんだから、もう一度食べなさい」と言って、もう一度口の中に入れます。
では、そこを卒園した人たちが20年後、30年後に、どういう生活をしているかということを調べてみますと、非常に皮肉な結果になっています。ほどんとの人が太ってしまって、体重100キロを超えるようになり、糖尿病と高血圧、成人病を抱えています。
その人達の食生活を見ていきますと、どんな食事でも3分あれば終わってしまいます。噛まずに飲み込む食べ方をします。
引用:自閉症の人の人間力を育てるp18
自閉症の人は「あれだけ偏食をしていたら病気になる」と言われても、体をこわさない。なぜ、あんなに偏食をしていて病気にならないのか。それは、彼らは好き嫌いで食べないのではなく、<自分の体に必要ないものは食べない>ということをしているのではないか、と私は思います。
彼らが食べたものの記録をとっていくと、ある時期に突然新しいものを食べ始めることが出てきます。自発的に食べているときは、どんなものでもなんの抵抗もありません。ですから私は、偏食の指導は強制的に食べさせるのではなく、納得させて食べさせることをしてきました。
引用:自閉症の人の自立への力を育てるp30
あとは家事を手伝うことで偏食が改善したと書かれています。
下の記事でもご紹介した本でも、偏食に限らず「生活習慣が整わないことが症状そのもの」だと私も思っています。幼児期だけでなく(幼児期が一番大変ですが)大人になっても偏食に悩まれている親御さんは多いです。
幼児期は子どもの生活習慣にまつわる助言がよくなされます。しかし「生活習慣がどうにもうまく整わない」というのが、この子たち症状そのものなのです。
引用:9章家庭の中でp136
まとめ
娘の偏食は、こだわりと味覚過敏もあって完全に普通とは言えません。私の方が対応に慣れたと言った方がいいかも知れません。この記事が誰かのためになるといいのですが。