お子さんの睡眠障害に悩まれている方も多いと思います。娘もひどい睡眠障害でした。今はだいぶ眠れるようになりましたが、聴覚過敏なので物音で起きる日もあります。学校の旅行なんかは眠れずに帰ってきます。
娘が1才代の私は「どうやったら寝てくれるのか」色々調べたり主治医に聞いたりしましたが、明確なアドバイスをくれる人はいませんでした。当時の私は何かヒントが欲しかった。そこから何か参考にしてみたかった。その昔の自分に対してこんな人もいるよと書いてみたら、誰かの参考になるかも知れないと思ったのです。
あなたのお子さんに当てはまるか分かりません。1例として参考になれば嬉しいです。
発達障害の睡眠障害
発達障害者の50%以上が睡眠の問題で悩んでいると言われているそうです。
詳しいメカニズムは分かっていません。しかし、成長の過程において脳の機能が不十分であるため、睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全の可能性が考えられます。
引用:阪野クリニック 発達障害に併発しやすい睡眠の問題
ひとくちに「睡眠障害」といっても症状は、人によって様々です。
- 寝つきが悪い(入眠困難)
- 夜間睡眠の途中で何度も目覚める(中途覚醒)
- 極端に早く目覚める(早朝覚醒)
- 夜に眠れない・昼夜逆転
- 眠りが浅く熟睡感が得られない(熟睡障害)
- 夜間睡眠時間が短い(ショートスリーパー)
- 体内周期と地球の24時間周期を調整できない(内因性概日リズム睡眠障害)
- 日中の強い眠気(過眠症)
このような症状があり昼間の生活に支障をきたしている場合が治療の対象になるそうです。
参考:阪野クリニック 発達障害に併発しやすい睡眠の問題
詳しくは分かっていないのですね。
特性上の理由
発達障害の特性上睡眠障害が起こりやすい原因があるそうです。参考:リタリコ発達ナビ
- 感覚過敏
感覚が過敏のため音や光・寝具の肌触りが睡眠を妨げてしまいます。 - 気持ちが切り替えられない
前にやっていた行動から睡眠へと気持ちの切り替えができない。 - 多動性・衝動性
心と体のON・OFFが上手くできない。じっとしていられない。 - 体の使い方が分かっていない
寝る前の力の抜き方・リラックス - セロトニン・メラトニン・コルチゾール不足
脳の機能障害のためホルモンの不足によって寝れない。メラトニンの出が健常者よりも1時間半遅れている。「ADHDと睡眠障害は表裏一体である」との見解が明らかに
朝起きられないものコルチゾール不足によるものと言われています。
下の記事でもご紹介した本でも、睡眠に限らず「生活習慣が整わないことが症状そのもの」だと私も思っています。幼児期が一番大変ですが、大人になっても睡眠で悩まれている方は多いです。
幼児期は子どもの生活習慣にまつわる助言がよくなされます。しかし「生活習慣がどうにもうまく整わない」というのが、この子たち症状そのものなのです。
引用:9章家庭の中でp136
生活習慣を整えればいいのか?
今まで娘が寝れずに苦しんできたのを見て、親として「早く寝せたり・早く起こしたり」色々試してきましたが、母子共に眠くてイライラして本当に辛かったです。
よく「生活習慣を整える」のが大事と言われますが、その生活習慣を整えるのが難しいのです。
「いつも空がみえるから」のyukiさんの記事が納得でした。一部抜粋させていただきました。
引用:なぜADHDの人は寝つきが悪いのか―夜疲れていても眠れない概日リズム睡眠障害になるわけ
- やたらと重いギアチェンジ
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〈起きる〉から〈眠る〉へ、また〈眠る〉から〈起きる〉へと移行するのが、なかなか簡単ではない、ということを示唆しています。
- 巨大な石油タンカーはすぐ止まれない
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櫻井先生は、脳の前頭葉機能の低下のため、「動き出すことが困難」「動き出した後、止まることが困難」だと述べています。
しかし、ADHDの人たちは、ホルモン分泌のパターンの切り替えもうまくいっていないのか、起きようとする時間にコルチゾールが分泌されず、寝ようとする時間にメラトニンが分泌されていません。
- 前頭葉機能の注意の切り替え能力
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「注意欠如多動症」を意味していますが、より正確に言えば、ADHDは注意力が「欠如」するのではなく、注意力のコントロール能力が「欠如」しているという発達障害です。
このような注意の切り替えができないのは、前頭葉機能の低下や、ドーパミンの不均衡によるものと考えられています。
またドーパミンは、動きをスムーズにする、という役割を担う、神経伝達物質です。ドーパミンが不足するパーキンソン病では、動きがぎこちなくなったり、止まろうとしてもすぐに足が止まってくれなかったりします。
- それは乳幼児期からの問題
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三池輝久先生の子どもの夜ふかし 脳への脅威 (集英社新書)には、自閉症とADHDの乳幼児が、しばしば独特の睡眠異常を示すということが書かれています。以下は引用ではなく要約です。
■自閉症の乳幼児期
自閉症児(ASD)の場合は、おもに泣いてばかりでよく眠れない(反応性亢進タイプ)、眠ってばかりでほとんど手がかからない(反応性低下タイプ)に分かれます。(p57)
■ADHDの乳幼児期
ADHDの場合は寝つきが悪い「寝つき不眠」と夜中に何度も目を覚ましてグズる「頻回覚醒」が見られ、そのような報告を記した論文は、2007年以降だけで300を超えるそうです。(p60) - 感覚過敏との関係も
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生まれつき、人よりも刺激に敏感で、ささいな感覚を強く受け取ってしまうと、ほかの子ならコントロールできるごく普通の刺激でも神経高ぶりすぎて、モード切り替えが容易にできず、なかなか寝付けなくなるのではないか、と考えられます。
- 「早起きすれば夜眠れる」という嘘
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ADHDの子ども・若者などの概日リズム睡眠障害を長年診てきた「子どもの睡眠と発達医療センター」の三池輝久先生は、不登校外来―眠育から不登校病態を理解する で次のように警鐘を鳴らします。概日リズム睡眠障害の子どもを早起きさせて、早寝させようとする取り組みは「禁忌」である
三池先生は早く起きれば早く眠れる、というのは、健康で体力のある人にのみ当てはまるものであると述べます。時計機構がずれた子どもたち、つまり、概日リズム睡眠障害や不登校の子どもには当てはまらないわけです。
こうした浅はかなアドバイスによって、子どもの慢性的睡眠不足や不登校、果ては慢性疲労症候群が増加していると言われています。
ADHDの人たちは、もともと脳の機能の不安定さを抱えているため、無理やり睡眠を削ってまわりに合わせているなら、双極性障害や境界性パーソナリティ障害のような二次障害を抱えやすくなってしまうかもしれません。
三島先生の朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識によると、身長の遺伝率が86%であるのに対し、乳幼児の睡眠時間は60-70%と、それほど変わらない強い遺伝の影響が認められるそうです。(p123)
遺伝的に異なる睡眠時間や睡眠リズムを持っているすべての人に、早寝早起きというパターンを闇雲に当てはめようとするのも、それと同じほどばかげたことです。それぞれの個性に合った生活リズムが考慮されるべきなのです。
- 「早く布団に入れば眠れる」という嘘
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このアドバイスに関しても、大人の概日リズム睡眠障害を長年研究してきた国立精神神経センターの三島和夫先生は、8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識 という本でこう述べています。
不眠症では絶対にやってはいけないことです。それをやっているから、みんな不眠症がわるくなっちゃうんです。(p146)
頭の中で条件づけが行われてしまい、「ベッド」= 「眠れない場所」というつながりが生じてしまうのです。それを繰り返せば繰り返すほど条件づけは強固になり、ベッドに入ると逆に目が冴えるようにさえなります。
勉強になりました。
娘の睡眠障害の経過
- 1才からはじまる
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娘は赤ちゃんの頃、粉ミルクを飲ませても、それほど飲みませんでした。だけど母乳ならごくごくと飲む。1才で卒乳しようと考えましたが、ちょうどその頃から睡眠障害が出てきて、添い乳をしないと寝付けなくなってしまいました。
2才の時に、感覚過敏から歯磨きをさせてくれなかったのもあって、虫歯ができました。そして母乳のトラブル(乳首が切れる、乳腺炎)が何度も起こり、断乳せざるを得なくなり、そこから寝なくなったのです。
- 当時の様子
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この時期が一番ひどかった。とにかく寝ない。お昼寝も夜も寝ない。寝かせようとするとキレる。たまに床に倒れていて、見てみると気絶したように寝ている。唯一寝るのは、私が歩き続けながらの抱っこだけでした。私も寝ていませんでした。過酷でした。診察時に娘の様子を聞かれても、私の記憶が飛んでいて答えられないほどでした。
- 1人目の主治医の先生
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2才5か月の時に自閉症と診断されました。1人目の主治医に睡眠障害があるから眠剤を出して欲しいとお願いすると「睡眠薬は6才以上からって決まってるんだよね」と。ただ脳波の検査前に使うエスクレ座薬(固形)は出せるということで使ってみました。悪戦苦闘して入れても娘は腹圧で出してしまうのです(感覚過敏が強い)。
当時メラトベルはありませんでした。海外ではサプリとして薬局で普通にメラトニンが売られていると知り、先生に飲ませていいかと聞くと「いいよ。ただあまり効かないかも」と。
はじめは液体のメラトニンを買ったのも悪かったのかも知れませんが、効きませんでした。
- 2人目の主治医の先生
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3才前に夫の転勤で引越し、病院が変わりました。2人目の主治医は、私が記憶が飛んで娘の症状を思い出せないのを見て、「お母さんを寝かせてあげたい」と言ってくれました(神様でしょうか泣)。1カ月睡眠記録を書いてくるように言われ、出してみると「これは辛かったね」と言ってくださり、「エスクレ座薬の液体があるよ。液体だから座薬のようには出せない」と説明。
はじめて3時間眠る
エスクレ注腸用キット(液体)を使うと、はじめて3時間寝ることができました。
この薬を使って3カ月。ちょうど薬が効かなくなりました。ですが先生は“想定内だったようです”(先生すごい)。「うんうん。そうだよね。」と「でも寝れるようになったね。」
でもこの薬のおかげでようやく寝るということが理解できたようでした。寝かしつけも怒らなくなったのです。先生には感謝です。出会わなければどうなっていたでしょうか?(T_T)
運動を兼ねての個別療育
運動もしてなかった娘。公園へ連れて行くも、遊具で遊ばず公園から出て排水溝を覗いて石を入れる毎日。多動で飛び出し有。危ないのでハーネス付のリュックをつけると怒る。危なくて毎日は外出できない。先生にこの話をすると週2回の個別療育で運動をさせようとなりました。
- 3人目の主治医の先生
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2人目の主治医の先生は、新規の病院の立ち上げに引き抜かれていなくなりました。(その時に困ったら電話してねと電話番号を渡してくれました。)3人目の先生はロゼレムという新しい薬が出たけど飲んでみる?と勧めてもらい飲ませると、寝るのですがお昼寝をする。そして夜の睡眠が中途覚醒してしまうようになり、中止しました。
再びメラトニン
やはり海外輸入でメラトニンを買って飲ませました。今度はカプセルが飲めるようになっていたので、カプセルを買い飲ませると寝るようになりました。それからメラトベルが出ると輸入はやめました。
- 今はメラトベルで安定
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メラトベルが出てからは、今は安定しています。それは体温調整も工夫したからだと思っています(下記)。
出会った本に救われる
当時は自閉症というものが良く分かっていなかったので、結構片っ端から本を読んでいました。その中で、篁 一誠(たかむら いっせい)先生の本が娘に当てはまったのです。
体温調節が苦手な人がいる
本には、自閉症の人は感覚が優れているため、体温・気圧・天気・台風・気温・満月の影響で睡眠障害になることが書かれていました。脳の機能障害なのだからそんなこともあると思いましたが、娘に当てはまると思っていませんでした。
自閉症の人たちの体温を計っていきますと、朝起床時の体温は35度台です。今まで一番低い体温が34.4度という報告を受けています。(略)こういう人たちが夕方から夜、特に就寝前の体温を測ると36度から37度台です。非常に高くなってきます。
熱があるとお風呂に入れられませんから、検温をします。36.8度微熱がある、そうするとお風呂に入れないという施設もあります。(略)
体温が上がりすぎると、寝つけなくなります。また、湯冷めをしないように、お風呂に入ってすぐ布団に入るとポカポカしてきて、布団の中が温まってきますと、やはりなかなか寝られません。
かと思うと、夏でも厚い布団をかけて、汗びっしょりになって寝ている人もいます。
引用:自閉症の人の人間力を育てるp33
ある日、熱を出した娘にアイスノン(枕)を使いました。その後風邪が治ってもアイスノンを使いたがるのです。「寝る前は暑いのだ」と気付きました。それから、今までアイスノンを使って寝ています(冬も)。
振り返ると娘は汗をかかない子どもでした。真夏であっても汗をかかない。汗をかいて体温を下げられないから、熱が体にこもる。手足はいつも冷たくて、どこに行っても靴下を脱ぎたがる。熱を出したいための行動だったかも知れません。
娘のエアコンの温度
本では、就寝前にパジャマを用意して汗をかいたら着替えてまた寝るということと、エアコンを使っての温度調整が書かれていました。
しかし汗をかいて途中で着替えるのは娘には無理だと思いました。なのでエアコンの温度を下げることにしました。何℃がベストなのか試していきました。
寝る前に部屋の温度を22℃にしておいて(夏)
メラトニン(今はメラトベル)を飲み
アイスノンも使って眠る
これで22~23時には寝るようになりました。朝も6時くらいに起きます。
他の対策
娘の場合、体温が1番の理由だったと思いますが、他には感覚過敏と多動と場面の切り替えの弱さ等がありました。
感覚過敏
触覚過敏の娘にはパジャマを変えてみました。寝返りしやすく肌触りのいいものとして、無印良品の脇に縫い目のないパジャマを着ました。縫い目のない下着も。
あとは自閉症の人は柔らかい毛布を持ち歩くと安心するという話も聞いたので、ニトリで肌触りのいい柔らかい毛布を選んでもらい、本人も気にっています。
主治医の先生から、好きな色の寝具でそろえている人もいると聞きました。お気に入りの安心できる寝室を作ることが大切ということだと思っています。
聴覚過敏でもあるため、寝室の時計の秒針が音が鳴らない連続秒針の時計に変えました。
多動と体幹
体幹が弱く多動でもある娘は、寝ていても同じ姿勢を維持するのが辛そうでした。抱き枕と加重毛布を使いました。
場面の切り替え
寝かしつけにキレていた娘です。他に気を紛らわせるものが必要だと思いました。調べてみるとスヌーズレンという自閉症の人のリラックス空間として光を使うことを知りました。プラネタリウムのようなものを探し置いてみました。結構これが気に入ってくれて、今も使っています。
実際使ってみての感想です
安っぽいおもちゃだけれど、こどもが気に入っているので結果いい買い物だったと思います。
・うさぎのフタを取らないと壁に映らないです。
・広い部屋や壁が高い部屋は光が届かず映らないと思います。
・画像のようにきれいには映らないです。薄い光という感じ。
・この価格ではこの程度なのかも知れません。
・回転させるとジーという音がするので、足元のところに台を置いて使うのがいいと思います。聴覚過敏の娘は回転させていません。
・リモコンが安っぽく、電池交換のフタが開かないです。(電池切れたらどうしよう)
・フイルムを変えるのが難しく、面倒。
まとめ
「睡眠障害」と言っても人によって様々ですし、その対処法も様々だと思っています。
睡眠障害は本当に過酷です。この記事が誰かのヒントに少しでもなれば嬉しいです。