発達障害のある子の中には「目の使い方」がうまくいっていない子がいます。その「目の使い方」をトレーニングして生活のしやすさを改善するのがビジョントレーニングです。
ビジョントレーニングという言葉をはじめて聞いたのは、母子通所のセンターの通っていた頃でした。そこでは集団療育とは別に個別療育も行われていて、知り合いのママから
ビジョントレーニングっていうのを受けたの
今までは目が顔に張り付いている感じだったのが
顔を動かさなくても目だけ動かせるようになって
本人もすごく楽になったみたい
その子は軽度知的障害で会話もできたので、大人の指示通りにトレーニングができ、目が自由に動かせることができるようになり、生活のしやすやもグッと上がったという話でした。
- 私が近くに行って声を掛けたり、手を振ったりしないと、私の存在に気付かないほど視野が狭い
- 近くに落ちている物を拾わせる時も、体ごと物に体を向けないと落ちている物に気付けない
- 引き出しから物を取り出す際に、引き出しの端にあるものは視野に入らず探せない
眼球を動かして、何かを探すということがとても苦手でした。
そして当時ほとんど会話ができませんでしたが、会話ができなくてもできるものを地道に行えば効果があるかもと思い、はじめてみることにしました。
ビジョントレーニングとは
ビジョントレーニングとは、トレーニングによって目の機能向上を目指すことで、生活や学習の問題の改善やスポーツのスキルアップなど幅広く使われているトレーニング法のことです。トレーニング自体はアメリカで50年以上前から行われているようです。
参考:リタリコナビビジョントレーニングとは? ビジョントレーニングとは?発達障害との関わり
発達障害児の困りごとを改善
発達障害のある子は、日常に多くの困りごとを抱えています。
特に目に関連する困りごととして以下のようなことがいわれています。
- 板書をするのに時間がかかる
- よく物をなくす。探し物を見つけられない
- ノートや本を見るとき目が近い
- 文字の読み間違い・書き間違いが多い
- 音読するとき行を読み飛ばしてしまう
- 鏡文字をよく書く
- 図形問題が苦手
- 文字を書くとマスからはみ出る
- 筆算を位をそろえて書くのが苦手
- はさみ・ボタンはめ・ひも結びなど手を使った作業が苦手
- 歩いているときに、よく体をぶつけたりつまずいたりする
このような困りごとを目のトレーニングで改善していこうというものです。
五感からの情報の8割は目から
人は五感を通して、外の世界の情報を集めています。その中でも8割が目からの情報といわれています。
人間の五感による知覚の割合は、視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚は1%といわれています。人間が受け取る情報のうち、8割は視覚からの情報です。
引用元:防災とピクトグラム
目からの情報を上手く処理し使うことができれば、その分生活も楽になるはず。
発達障害のある子は、感覚過敏が強かったり逆に弱かったりするので、その情報処理もうまく機能していないのだろうなぁと想像しています。
hakuを育てていると、私と同じもように見えて聞こえているという前提ではいけないと気付かされることがあります
見えにくい理由
私たちが、ものを「見る」機能には、多くのプロセスがあります。
たとえ、静止している物を見る場合であっても、物が自分の視野に入るように移動し、映像としてとらえ、目の水晶体のレンズを厚くしたり薄くしたり変化をさせピントを合わせ、脳が形や位置などを把握するという処理を一瞬のうちに自然と行っているそうです。
見る機能
ビジョントレーニングの第一人者として、有名な北出勝也先生の本から少し抜粋させていただきました。
※著書ではもっと詳しく説明がされています。
見る機能には3つのプロセスがあります。
①入力 | ②視覚情報処理 | ③出力 |
目で映像をとらえる | 見たものを認識する | 見たものにあわせ体を動かす |
眼球運動 | 視空間認知 | 目と体の協応 |
発達障害がある子は、「見る」という機能がうまく連動しないことで「見えにくさ」があるようです。
眼球運動
- 追従性眼球運動→ものを目で追う動き
- 眼球だけをなめらかに動かして、見たいものに視線をあわせる運動
- 跳躍性眼球運動→視線をジャンプさせる動き
- ある1点から別の1点へ、すばやく眼球をあわせる運動
- 両眼のチームワーク→両眼を寄せたり、離したりする動き
- 距離にあわせて自動的ピントをあわせる動き
視空間認知
- 図と地を区別する働き
- 見たいもの(図)と背景(地)を区別する働き
- 形や色を把握する働き
- 形(輪郭)や色を正しく認識する働き
- 仲間を見分ける働き
- 大きさ・色・向き・位置などに惑わされず、同じ形を「同じ」と理解する働き
- 空間的な位置を把握する働き
- 見た映像を分析し、立体像、大きさ、上下左右などの向き、自分から見た方向、距離などを認識する働き
目と体の協応
目と体が連動するプロセスは、この3つのプロセスがうまく働くことです。
これがうまく連動しない結果、先ほどの困りごとにつながってしまうのです。
発達障害は脳の機能障害ですから納得です。
わが家のトレーニング
私ははじめて、ビジョントレーニングのはじめたのは2012年12月(Amazonの履歴)とあったので、hakuが4歳の頃からになります。すでに表紙がないものもありますね(。-∀-)
当時は切り貼りドリルにハマっていた時だったので、そのついでに目を動かすワークをはじめました。
自閉の濃度
作業療法士の先生に、ビジョントレーニングのことを尋ねると、娘のように自閉が強い子はトレーニングの効果がすぐには出ないだろうといわれました。
それでも幼いころから毎日の習慣として行ってきた現在は
・私を遠くから見つけることができるようになった
・目だけを動かして物を探すことができるようになった
だいぶ目を使うことが上手になったなぁと実感しています。
目を動かすことを楽しんでいました
ビジョントレーニング・ワークブック
私が持っている中で、このビジョントレーニング・ワークブックが一番、ワークシートが多いです。
その数157点!なかなかこの量はないです。ロングセラー商品です。
- ビジョントレーニング第一人者北出勝也先生の著書
- 見えにくさの説明が丁寧でわかりやすい
- トレーニング前の目のウォーミングアップやストレッチ
- 日常生活で伸ばす生活習慣
- ビジョントレーニングの効果
- 効果的な指導方法
- こどものやる気を引き出すコツ
- 環境整備
- ながらトレーニング
- 見る力を調べる簡単チェックリスト
- 簡単なものから難しいものまで幅広いワークが157点
- ワークシートの上手な使い方の解説
- ただ1つ残念なのは、本が厚手なためコピーがしにくい
体を動かす体操や運動もあって楽しんで取組めています
hakuは時間がかかりましたが、障害の軽いお子さんだともっと効果が早くでるのではないかと思います。
こちらはCD-ROM付きで印刷が楽です