発達障害の子と関わるのは、本当に難しいことです。私たちと同じであって、同じではないと思わされる場面がたくさんあるのです。
今回は、ベストセラーにもなっている【発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全】についてご紹介させていただきます。2023年3月に発売され既に7万部も読まれている本です。
誰にでも読みやすく、実際に効果のあった100の工夫が紹介されています。
グレーゾーンではないけれど
私は娘が生まれてから今まで、障害関連の本を100冊以上読んできました。それほど育てにくい子だったのです。
中度知的障害がある自閉症なのに「グレーゾンの子向けの本を読んで参考になるのか?」と思われるかも知れませんが、(次の理由もあって)とても参考にさせてもらっています。
- 障害の重い子向けの本は、専門的な本が多く、気軽に読める本が少ないように思います。
- 昔は言葉がなかった娘の気持ちを理解して対応したく、当事者の本や療育・支援の本を読み、勉強になっていたので、それが今も続いています。
- 自分自身の情報のアップデートのため。
- 主治医・学校の先生、周りの支援者の方に、娘のことを分かりやすく言語化して伝えられるようにするため。
- 少しでもヒントになったことは、娘のために工夫してやってみたいと思っています。
- 親の私はどうしても主観的に考えがちで、客観的な視点に戻るためにもためになっています。
新しい発見や見方は、子育ての参考になっています。
SNSや動画などの情報も見たりしますが、本が一番自分の身となって、深く理解できるように思います。今後もこういうジャンルの本は読み続けていくと思います。
発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全
文庫本の一回り大きいサイズで、288ページもあるので割と厚みがある本です。
著者の小嶋先生は、大学1年生の時にボランティア活動で初めて発達障害のある子と出会い、在学中に青年の余暇支援団体を立ち上げ、発達障害児の家庭教師を何人も担当し、教師の道へ進み、現在は講演・海外研修・カンファレンスでの助言をされているそうです(まえがきより)。
インスタ・note・FMと幅広く情報発信をされています。
ベストセラー
Amazonの本のジャンル「障害児・福祉教育」にいつもランキング入りしていて、楽天ブックスの障害児教育部門でも1位になっています。
2023年3月に発売され、既に7万部も突破したそうです。(一般的には2万部以上で大ヒットといわれています)
特徴
この本がベストセラー本になるのは、今までここまで分かりやすくて・読みやすい本は、なかったからだと思います。
- 専門用語がなく、誰にでも分かる表現で書かれている
- かわいい四コマ漫画・イラストが描かれていて、読みやすい
- 1つ項目の文章量が多くないので、読書が苦手な人も読みやすい
- 発達障害児と関わる上での注意点と工夫が具体的に書かれている
- 現場で実際に効果があった100のスキルが書かれている
- 実際の事例が描かれている
- 目次から気になったところの拾い読みもできます
- 毎日忙しいお母さんが読みやすい作りになっています
- 小学校低学年の子を想定した内容ですが、発達年齢が同じくらいの子にも役に立つと思います
はじめて支援に入られる方にもおすすめです
100のスキル
目次を見ると何が書かれているかよくわかります。100のスキルごとに1から100までの番号が振られています。
大体どんなことが書かれているか簡単にまとめてみました。
1章 発達障害の子が見ている世界 |
1)話が伝わりにくいのはなぜか 2-4)問題行動が起きやすい理由 5)なぜ集団に適応できないか 6)問題は脳だけではない 7-13)感覚過敏 |
2章 目のつけどころと原則 |
14)注意すべき時期がある 15)全ての対応の基本 16)支援方法を検討する時は 17-18)すぐサポートできるように 19-20)問題行動が起こったら 21)厳しく注意するより 22-24)子どもと話す時の原則 25)子どもの気持ちを見抜く方法 コラム 小学生にSSTは必要か |
3章 効果があった「ほめ方・教え方」 |
26-29)基本ルール 30)言葉を確実に届けるために 31)ほめる点を見つけるために 32)より具体的にほめるために 33)学んでほしいことがあるなら 34)信頼関係を構築したいなら 35-38)より効果の高いほめ方 38-39)効果を持続させる工夫 |
4章 こだわりとの向き合い方 |
40-41)向き合い方のルール 42)こだわりを止めたいなら 43)次の行動へ誘導するには 44-45)行動の切り替えをうながす工夫 46)周囲の迷惑になる行動は 47こだわり行動の予防に コラム こどもと「相談して決める」こと大切さ |
5章 気になる行動の予防と解決法 |
48)子どもがうるさいときは 49)部屋や机が汚いときは 50)私語が多すぎる子には 51)不安感が強い子には 52)不安を言葉にしない子には 53-54)順番を守れない子には 55)勝ちにこだわる子には コラム 実は「遊び」の支援が一番大事 56)空気が読めない子には 57-58)すぐ反抗してしまう子に 59)乱暴な言葉をぶつける子に 60)勉強を減らしてとせがむ子に 61)大人に「やって」とせがむ子に コラム 不安感が強い子が増えている |
6章 多動・不注意の効果的サポート |
62-63)落ち着かない原因 64)目移りして集中できない子に 65-66)体が動いてしまう子に 67)しっかり聞いてほしいときは 68)注意散漫なときは 69)話が伝わりにくい子に 70)大人の話を聞いていない子に 71)目移りして集中できない子に 72)やる気になってほしいときは 73)だらけている子には コラム 学年によって変わる多動への対処法 |
7章 パニックを防ぎ、落ち着いてもらう方法 |
74-75)パニックを防ぐ一言 76)パニック寸前の基本対応 77)パニックになってしまったら 78)人や物に当たってしまうなら コラム 子供のパニックで絶対にしてはいけない対応 79)子どもを落ち着かせるために 80-82)再発を防ぐために コラム 挑戦できた時点で子供をほめよう |
8章 他害行為の対処法 |
83)必ず理解しておくべきこと 84-85)未然に防ぐ方法 86)子どもを悪者にしないために 87-88)暴力が出てしまったら 89-91)再発を防ぐために コラム とっさの代替行動でトラブルを回避したケース |
9章 道具を使って支援を広げる |
92-93)多動を解消する道具 コラム センサリーツールで感覚過敏に対応したケース 94)姿勢の改善に 95-96)行動の切り替えを促す道具 97)字が上手く書けない子に 98)食事をこぼしてしまう子に 99)負ける経験を積ませるなら 100)パニックや暴力の予防に |
3章の「ほめる」ということだけで、26-39まで14のスキルがあるほど、ほめることが大切だと分かります
共感・気付き・勉強になったところ
私が共感したり、気付きや勉強になったところは多くあるのですが、全部書いてもネタバレになってしまうので一部を書いてみます。
5)なぜ集団に適応できないか
子どもには「地獄」だから
- 集団のルールに従わなければいけない
- 時間割など予定の変更があり見通しが立たない
- 失敗の経験が積み重なる
運動会、学習発表会、行事の前の練習がはじまると、不安定になったり、荒れたりする子がいます。支援学校で情報が事前に視覚的に配慮されいる環境でもです。
お母さん方から「行事って誰のためにあるんだろうね?」。子どもも先生も大変。不安定な子のケアをするデイのスタッフ・家族も大変。「みんなの我慢大会だよね」。
行事が楽しみな子もいますが、中にはパニックや癇癪を起す子もいます。
hakuは小学校高学年くらいから、行事を楽しめるようになってきたようです。
7~13)感覚過敏
感覚過敏について、(感覚過敏が主題の本以外で)ここまでページを割いている本は、あまりないと思います。
支援の現場では、感覚過敏については理解されていても(伝えていても)、一旦集団の中に入ってしまうと、毎日の忙しさから【忘れがち】【軽視されがち】【配慮不足】だと感じることが、まだまだ多いと思っています。
感覚過敏の子にとって、家の外はジャングルそのものです。そして毎日そのジャングルから、生還することを目標にしたサバイバーです。学校に通っているだけでも本当に偉いと思います。
サバイバーという表現は、当事者である小道モコさんの本を読むと、よく理解できました。
14)注意すべき時期がある
5歳(年中)9歳(小学校中学年)13~14歳(中学入学後)特に真面目な女子が要注意
5歳は集団に適応できるか、9歳は不登校になる子が出てくる時期、13・14歳も心が折れて不登校になる時期。
大人は「暴力的」「立ち歩きをする」など、問題行動を繰り返す子に目を向けがちですが、真面目でおとなしい子ほど、様子をよく観察する必要があります。
真面目な子は「過剰反応」(無理をして集団に適応しようとすること)に陥っていることがあるのです。無理を続けて疲弊して、限界に達すると不登校になり、そこらから抜け出せなくなることもあります。
引用元:14注意すべき時期があるp57
hakuも、とても真面目な女子です。そしてこの年齢、当てはまりました。実際に小3で不登校、中3で不登校になっています。娘だけかと思っていましたが、注意すべき時期だったのですね。
22)子どもと話す時の原則①
大人は必ず「CCQ」を保つ
- Calm=穏やかに
- Close=近づいて
- Quiet=静かに
大前提としてこれが守られていないと、何を言っても通じないと思って下さい。(略)
ちなみにCCQは大人に対する戒めでもあります。大人が先に興奮しては、しつけや教育などできません。「子どもよりも先に興奮しない」というのも、大人が身につけておきたい大切なスキルです。
引用元:22子どもと話す時の原則① p76
以前、紹介した本でも声掛けは「小さい声で・短く・肯定形で」と書かれていました。本当の理解者は支援方法が似ていますね。
これは特に気を付けて娘と接しています
27)知っておきたい基本ルール②
「教えっぱなし」でいこう
「教える。けど、すぐにできると期待しない。」という心がけが大事と書かれています。本当にその通りだと思います。
娘に説明して、本当に理解できたのか、二度とやらないか、正直追いつめたくなることは何度かありました。しかし、それはお互いに辛く、苦しくなるだけだと気付き、すぐにやめました。
「とにかく時間がかかる」「すぐにはできない」「何回も教えよう」と思っておけばいいのだと思います。気付けば時間が経ってから、以前教えたことが活きているということは、実際に何度もありました。
50)私語が多すぎるときは
「内言語トレーニング」で減る
- メモ作戦
- 繰り返し唱える作戦
- アプリ作戦
娘は多弁症でも、おしゃべりでもないのですが、たまに同じ言葉を繰り返し、勝手に伝わったと思い込んでいることがあります。アプリで自分の言葉を見せるのは、とてもいいアイデアだと思いました。
2023年グッドデザイン賞を受賞したアプリ。私も使っています。
55)「勝ち」にこだわる子には
ゲームで「負ける経験」をさせる
まずUNOやトランプのようなカードゲームを用意します。
引用元:55「勝ち」にこだわる子には p164
そして子どもとゲームで遊ぶのですが、ここで大事なのは、大人ができるだけ、子どもを「負ける寸前」まで追いつめることです。(略)根気よく、何度も繰り返していると「今日は子どもを負かしても大丈夫だ」と思えるタイミングがきっと見えてきます。
コラム 実は「遊び」の支援が一番大事
「勝ち」へのこだわりは、子どもの生活を考えると意外と深刻です。というのは、負けると怒ったりパニックになったりする子は、やがて友達と遊んでもらえなくなるからです。つまり、人間関係をつくれなくなってしまうのです。
だから【たかが遊び】と軽視せずに、きちんと支援しなければいけません。
引用元:コラムp167
小学生くらいまでhakuは「負ける」ことが苦痛で、デイなどでの「勝ち負け」のゲームに参加し負けた後は、家で泣いていました。その内それが辛く、ゲーム自体に参加しなくなりました。(デイや学校で泣かないので、気付かれにくく、支援が入らない人です)
中学生になると、授業でのゲーム設定の場面では、この人には負けるという人と一緒になると、あえて力を抜いてわざと負ける選択をするようになりました。それも生きる知恵ですから、私は十分立派だと思っていました。しかし本人は悲しくて、帰宅して泣いていました。このままでいいのか?とモヤモヤとしていました。
勝ち負けだけのことではないですが、その子の我慢レベル(限界レベル)にあわせて、何回も経験させて、失敗も成功も慣れさせることが大事だと思っています。
本で紹介されている支援グッズ
第9章で紹介されている支援グッズを一部紹介させていただきます。
多動解消
ふみおくんは、椅子や机の脚につけるゴム紐で、座りながらゴムを踏んで「動く」ことができます。お子さんにも好評のようです。
勉強に集中できない子に、お手玉をいじりながら勉強してもらうと上手くいったケースも。
聴覚過敏対策
感覚過敏には逆に刺激を追加するとうまくいく場合もあるようです。
hakuもデイの送迎時や、通学バスの中で、プチプチやフィンガースピナーを持たせていました。
行動の切り替え
タイムタイマーは色々な種類が出ていますね。
アプリもあります(^^)
パニックや暴力の予防
怒りなどのマイナスの感情を表に、裏にプラスに言い換えた語彙が書かれたカードが入っているようです。
まとめ
今回は【発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全】の本について、ご紹介させていただきました。
分かりやすく誰でも理解できる言葉で、大事なポイントをほとんど抑えている、本当にいい本です。
真剣に誠実に、発達障害児と向き合って作られた本だと分かります。
どの本にも言えますが、娘に当てはまらない部分もいくつかありました。それでもいいのです。100人いたら100通りの支援があるといわれています。情報のいいとこ取りをして、自分の子育てに生かしていければと思っています。
是非読んでみてください(*‘∀‘)
小嶋先生の2冊目が出ました。