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「老化」が早い知的障害者

知的障害者の方の老化とその進行は早く、早い人だと40歳代から兆候が出始め、今まで できていたことができなくなったり「認知症」を疑われる症状が出始める人もいるといいます。つまり健康寿命が短い人達といえます。

私は娘に長生きしてほしいとは考えていませんが、今でさえ障害を抱え、ままならないことが多くあるのに、さらに病気で苦しみ続けながら生きてほしいと思っていません。

高齢の知的障害者の健康問題の現状を知ることで、今からできることがあるのではないかと考えています。

この記事は【自閉症+知的障害のある子の親】である私自身のアウトプット用に書いたものです。知的障害者の高齢の話と関連する認知症・65歳の壁・8050問題にもふれています。引用が多く長文となっていますが、私と同じく高齢化の問題に、興味のある方は読んでくださると嬉しいです。

最後に私なりの対策も考えてみました( •̀ ω •́ )✧
※この記事は、知的障害のある自閉症の人を想定して書いています。

目次

知的障害者の老化現象は早く訪れ、その進行も早いといわれています。

 すでによく知られているとおり、知的障害者の老化現象は早く出現し、進行します。一般の人たちよりも 10 ~ 15歳早いと言われていますが、高齢期支援を続けてきた私の実感からも、それは間違いないことです。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター69号

老化の兆候が知的の障害がない人と比べて10歳から20歳は早く見られるともいわれています。

引用元:「親なき後」をみんなで支える

重度の知的障害者の場合、健常者より早期に老化する傾向があるため、高齢に起因する事故も健常者よりも早期に起こります

引用元:国立のぞみの園ニュースレター65号

知的障害者は、加齢による心身の機能低下一般の人より早く、標準的な加齢よりも10 〜 20歳程度、高齢化の症状が現れるのが早い人が多いと言われています。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター65号

高齢の知的障害者の施設で働く職員さん達には当たり前の認識のようです

老化の兆候は40、50代から

知的・発達障害者は身体機能の低下が早く、急速に進む傾向がある

  • 40、50歳代から老化の兆候がある
  • 複数、多くの疾病に罹患する傾向がある
  • 生活習慣病に罹りやすい傾向がある
  • 肥満になりやすい傾向がある

ADLは40歳代から低下の傾向 IADLは50歳代から低下の傾向

引用元:障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究

「ADL」とは、手段的日常生活動作と呼ばれ、移動、入浴、排泄、食事、着替え、洗顔など生活に必要な動作のこと。
「IADL」とは、複雑な動作と判断が求められる動作のことをいい、掃除、金銭管理、会話、服薬、公共交通機関の利用などの応用的動作のことをいいます。
ADLの基本的動作が先に衰えることで、応用的な動作に影響が出てしまうのですね。

早い人だと30代から
できていたことができなくなった人もいると聞きます

なぜ知的障害者の老化が40代という若いうちから起こってしまうのか、考えられる要因をあげます。

もちろん全ての知的障害者の方の老化が早いわけではありません。きちんと健康管理できる方もいると思います。しかし知的障害がある場合、複合的な要因で健康を損ねやすい状態が続くことがあるといえます。

適切な生活習慣が身についていない

知的障害が重ければ、適切な生活習慣を身に着けるさせること自体がとても難しい。

幼児期は子どもの生活習慣にまつわる助言がよくなされます。しかし「生活習慣がどうにもうまく整わない」というのが、この子たち症状そのものなのです。

引用:こころをラクに、あたまをクリアに
  • 食事の偏り
    • 食事に偏りが多い子が多く、その背景には味覚過敏こだわりがあるといわれています。健常児の偏食とはわけが違く、特定の物しか食べられない、特定のメーカーの物しか食べられない子もいます。
  • 睡眠障害
    • 自閉症の人は睡眠障害を抱えている人が多く、睡眠薬を出してもらっても、その日の出来事やフラッシュバック、予期不安、感覚過敏など強い刺激の影響で、薬を飲んでも眠れない日が多くあります。また薬の副作用で、昼間に寝てしまったり、朝起きれなくなったりということもあるため、量を多くすればいいという問題でもありません。
  • 運動習慣
    • 障害のある人は、運動が苦手な人(発達性協調運動症DCDをもっている人)も多く、運動すること自体が難しい人も多く、また習慣づけることも難しい。そのため肥満になりやすい。

知的障害があっても、基本的な生活習慣が身についているお子さんもいます。
ただ自閉症の子どもは難しい場合が多いように感じます。

薬の副作用・長期使用・多剤化による代謝異常

障害児は幼いころから薬を服用している人が多くおり、抗てんかん薬、抗精神科薬などは、副作用により肥満食欲増進、体重増加)になりやすく、また薬の長期化、多剤化代謝異常を引き起こすことがあるといわれています。

第一世代抗精神病薬は錐体外路症状(EPS)を引き起こす可能性が高いが、第二世代抗精神病薬は代謝性症状を引き起こす可能性が高い。

引用元:抗精神病薬の副作用管理についての注意点

第二世代抗精神病薬の中には、自閉症児者にも使われるリスペリドン(リスパダール)・アリピプラゾール(エビリファイ)・ペロスピロン(ルーラン)があります。

リスペリドン:6mgを超えると錐体外路症状,用量依存的なプロラクチン濃度の上昇,またはメタボリックシンドロームを引き起こすことがある

引用元:MSD第2世代抗精神病薬

一人あたりの平均疾患数は約8種類でした。こうした病気になる傾向が障害のない人と比べてどうなのかは一概には言えませんが、比較的若いころから複数の病気になり、複数の薬長期に渡り服用していることが特徴にあります。

引用元:「親なき後」をみんなで支える

障害者支援施設に入所している知的障害者の服薬に関して令和4(2022)年に国立のぞみの園で調査したところ、一日平均6.6包のお薬を飲んでいるという結果が得られました。処方理由に関して平成30(2018)年に東京都自閉症協会が調べた結果では、一番多かったのが「多動or衝動」で次に多いのが「睡眠でした。服薬は健康管理等に必要なものであると同時に、飲み方を誤れば心身にダメージを与えるものでもあります。そのため服薬に関しては常に安全の確保が重要です。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター77号

精神の安定が一番ですから、薬は大事だと思っています。服薬を否定しているわけではありません。

娘の場合は、エビリファイを服用して、数か月で一気に体重が増加しました(今は別の薬を飲んでいます)

安定しているときに減薬する

自閉症の人は、思春期以降に服薬を開始する人服薬量を増やす人がグッと増えると聞きます。

主治医の先生によると「薬だけ」で落ち着くことは、まず「ない」。
必ず環境調節(刺激になる人・物に近づかないなど)の支援・配慮とセットで行うことが必要といいます。

そして安定しているときに、減薬をしていくことが、薬と長く付き合うには大事なことだとおっしゃっていました。

娘は中学生の時にイライラがひどくなり薬を飲み始めました。今はとても安定しているので減薬をしているところです。

運動習慣がない

知的障害者は運動器20~ 30 年早く脆弱化することがいわれており、早い段階から運動習慣を身につけ、活動度を維持することが必要です。

引用元:国立のぞみの学園ニュースレター69号

足腰が弱くなると転倒や骨折から車いす生活になってしまいます。生活介護事業所を見学させてもらっていると、運動器具が置いてあるところは割と多いように思います。また散歩として毎日徒歩での移動を課しているところもありました。

のぞみの園で平成29年4月の時点で、利用者238名の平均年齢は63.2歳で、そのうち56%と過半数の利用者では自力歩行ができず車いす使用となっています。

引用元:国立のぞみの学園ニュースレター61号

運動でなくても「家事」でもなんでも、毎日体を動かすことを習慣化することが大事です。特に卒業後の運動習慣をどうするかが鍵となってくると思います。

生活習慣病になりやすい

基本的な生活習慣が身についていなく、肥満リスクが高ければ、生活習慣病になりやすいといえます。生活習慣病に罹ると、他の様々な病気にかかるリスクも上がります。

40~50歳代には、  健康状態では、高血圧、糖尿病、高脂血症 などの生活習慣病に関する疾病が多く見られた。

引用元:障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究

生活習慣病が進行すると、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症 などの影響で、血管に血栓形成が起こりやすくなり、心臓 や脳の微小血管が閉塞し、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な病気につながります。

引用元:国立のぞみの学園ニュースレター69号

自身でリスクを回避することが難しい

知的障害のある自閉症の人は、体をうまく使うことが苦手です。危険を予測して避けることも難しいこともあります。

原因不明の骨折が多い

ある入所施設の骨折状況を調べたところ、大腿骨に次いで手足指の小さな骨折が多く、なぜ骨折したのか分からないケースが多く確認されたそうです。

こうした細部の骨折の原因は、自身でリスクを回避することの困難さから生じていることがうかがえました。知的に障害がある人が高齢になると、「当たると痛いから避ける」「骨折してしまうからも知れないからぶつけないように注意する」といったリスクの回避を自身で行うことが、これまで以上に難しくなるのかもしれません。

引用元:「親なき後」をみんなで支える

感覚鈍麻で痛みが感じにくい人、痛みがあっても伝えることが難しい人、こういった方たちが高齢化で身体が衰えて、更にリスク回避できなくなるのではないでしょうか。

骨折と関係あるのは、骨密度の低下もあります。
骨粗鬆症になって、骨密度が低下しても痛みはありませんが、ちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。体を上手に使うことが難しい知的障害者の人が骨折しやすいのは分かる気がします。

病気に罹りやすく、複数の疾患を持っている

知的に障害がある人特有のリスクの1点目に「病気にかかりやすい」ということがあります。図はある県にある入所施設で亡くなった利用者72人が罹患した病気を発症した年代をまとめたものです。消化器系疾患にかかった人が最も多く、ついて眼および付属器呼吸器系疾患運動機能の障害となっています。

一人あたりの平均疾患数は約8種類でした。こうした病気になる傾向が障害のない人と比べてどうなのかは一概には言えませんが、比較的若いころから複数の病気になり、複数の薬長期に渡り服用していることが特徴にあります。

引用元:「親なき後」をみんなで支える

知的・発達障害者は、50代頃呼吸器系疾患、内分泌栄養 及び代謝疾患、脳・神経の疾患、尿路性器系疾患等に罹りやすいことが解っています。また、偏食、睡眠習慣の特異性、運動不足等が起因となり、生活習慣病に罹りやすいとも言われています。

引用元:のぞみの学園ニュースレター73号

目の病気【白内障】が多い

50歳を超えるあたりから白内障に罹患する人が増えるといいます。
視覚支援で過ごしてきた人たち。絵カードなどの視覚的な支援が見えなくなる不安やストレスは、かなり大きいのではないでしょうか。40歳を過ぎた辺りから眼科の定期検診が必要とされます。

 眼科的な疾病の罹患率が知的障害者においては非常に高いということをまず知る必要があります。やや古い資料ですが、表1(下)の白内障の部分をご覧ください。白内障は、眼の中のレンズの役割をしている水晶体が白く濁る病気であり、それによって視力が低下します。60 歳~ 69 歳の階層を比較してみると、白内障の罹患率が一般高齢者群では 0.6%なのに対して、知的障害者群は 16.7%という非常に高い罹患率を示しています。単純計算で 25 倍以上です。(略)その他にも結膜炎、緑内障、糖尿病性網膜症、翼状片、斜視といった疾病にもに罹患している人が 34 名となっています

引用元:のぞみの学園ニュースレター69号

うちの法人は高齢の知的障害者の施設なんですけれども、70代で約8割80代で100%が白内障になっているんです。(略)手術をすれば見れるようになるんです。ただ問題は、手術ができない人たちがいるということです。手術自体はできたとしても、予後の対応ができないのであきらめてしまうケースが挙がっています。

引用元:対話から始まる脱!強度行動障害
  • 聴力低下が見られた頃より、会話でのやりとりに積極性が見られなくなった。
  • 白内障のため次第に目が見えなくなってきており、見えづらいためか他利用者の居室に入り込んだり、トイレの場所が分からず泣き叫んだりするなど、行動範囲が徐々に縮小していた。
引用元:障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究

視覚情報を頼りに生活している自閉症の人の目が見えなくなるなんて、辛いでしょうね。問題行動も増えるのかも知れません。

老化が早いのなら「老眼」も早いのではないでしょうあ。ルーペの活用や視覚情報の拡大も必要な支援となりそうです。

視力低下のサイン
  • 歩行にふらつきが出てくる
  • 人や物にぶつかることが多くなる
  • 階段や段差に躓きそうになる
  • 物を手に取ろうとした際にその物との距離の感覚がズレているように感じられる
  • 歩行中に廊下に引かれたラインをまるで障害物のようにまたぎ越そうとする
  • 物に近づいて見るようになる
  • 不器用になる
  • 物をよく落とす
  • 頭を揺らす
  • 人が近づいてくると驚くようになる

参考:知的障害と認知症

認知症になっていることも

知的障害者で認知症になる人もいます。早い人ですと50~60代で発症する人(40代から予兆の可能性)もいます(参考:のぞみの学園ニュースレター69号)

認知症のためにできなくなっているのに「甘えている」「さぼっている」「やる気がない」誤解され、不適切な支援に繋がっていたケースも少なくない。

引用元:知的障害と認知症

ダウン症の方は染色体の問題で、比較的若い段階から認知症を発症すると聞きます。

身体機能の低下や精神機能の低下による重度化が問題です。
代表的な身体機能低下としては、嚥下機能や下肢機能の低下があげられ、喉詰めや誤嚥性肺炎のリスクの増加や、下肢機能の衰えは歩行困難を招き、転倒による骨折のリスクを高め、車椅子の導入につながります。
精神機能の低下は生活全般の不活性や新たな行動問題を招き、最近はその原因として認知症の罹患があげられることも少なくありません。更に、高齢化により様々な疾病の罹患率も上がり、通院や服薬管理等、支援者の負担も増えていきます。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター61号

知的障害のある人が認知症になったとしても、長谷川スケールのような一般的な検査はできません。実際はどのように診断しているのでしょうか。

知的障害者の認知症の診断

知的障害者の認知症診断には
①日本語版DSQⅡD(知的障害者用認知症判別尺度)
②日本語版NTG-EDSD(知的障害者用認知症チェックシート)
③ICF本人状況整理シート
④CTやMRIの画像診断
本人に頼るのではなく、日頃支援している支援者、家族によって定期的にチェックしていく方法がとられているようです。

知的障害の人が認知症になると、今までてんかん発作がなかった人も発症しやすいといいます。

認知症を疑う前に

今までできていたことができなくなったり、行動力や積極性がなくなってきたときに「認知症では」と疑われることも多いようですが、認知症ではない疾患の場合もあり「何かいつもと違う」と思ったときに、疑う順番としては身体的疾患がないか②精神的疾患がないか③心因性の疾患がないかと潰していくことが大事ということです。
実際には認知症ではなく糖尿病・統合失調症、うつ病ではなく甲状腺機能低下症だったというケースもあったようです。
参考:高齢化する知的障がいのある人の退行性変化とその対応ポイント

病院を気軽に受診できない

自閉症の子の受診には、苦労している親御さんは多いです。感覚過敏があり、コミュニケーションも取りにくいとなれば、さらに大変です。障害が重ければマンツーマンの対応が必要で、人手や移動に負担が生じ、本人が理解しやすい情報の工夫も必要です。

受診経験が少ないまま大人になれば、体が大きくなり力もついている分、病院へ連れていけいないという話も聞きます。

病院側からの受診拒否もある

私は経験ないのですが、病院側の診療拒否の話も聞きます。病院が障害者への知識や理解がなければ、仕方がない話なのですが、そうなら障害の重い子はどこの病院にかかればいいのでしょうか。

とかく手が掛かりコミュニケーションも取りにくいため、幼児時代より医療機関から 敬遠されがちな知的障害児者。診療拒否やたらい回し多くの保護者が経験している

引用元:医療的管理下における介護及び日常的な世話が必要な行動障害を有する者の実態に関する研究

認知症診断に限らず、知的障害者が健康診断を受けられる医療機関、CTやMRIなどの高度先進医療を受けられる医療機関は、我が国ではさらに少ないと思われます。実際に精神科や認知症外来のある医療機関等でも、知的障害者の認知症受診が断られたケースが関係者から報告されています

引用元:国立のぞみの園ニュースレター57号
知的障害者の認知症の診断にはDSQⅡDやNPI-NH(認知症による行動・心理症状の状態を表す検査)などが使われている

他のお母さんの話ですが、将来や緊急時に備えて、小さいころからあえて大きな総合病院を受診しておくという方もいました。

不調を訴えることが難しい

知的障害者の人は、身体の異常や変調を訴えることが難しい人が多いです。

知的・発達障害者を支援する人は、高齢期の知的・発達障害者の身体状況の変化に気づくことができるのでしょうか。早期に発見するには、本人の気づきそれに必要な知識、加えて異常を他者に伝えるコミュニケーション能力が必要です。しかし、知的・発達障害者の多くは、自らの変化に気づき、将来を予見し他者に伝えることが苦手です。この場合、「周囲の気づき」が重要となります。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター73号

「痛み」ひとつとっても、感覚鈍麻の人は痛みに気付かずに治療が遅れたり、感覚過敏の娘は、ちょっとしたことでも痛みを訴えるので、病院を受診するレベルなのか判断がつかないこともあります。

他には、事業所の散歩中に他害をするようになった人がいて、その原因が「膝の痛み」だった、飛び跳ねる回数が増えた人がいて、その原因が「虫歯」だった人もいます。
周囲が気付いた頃には、病気の進行が進んでいることが多い(特に癌は初期は痛みがありませんから)。

病気の早期発見が難しい

本人からの訴えが難しければ、周りが気づくしかありませんが、それも難しい話です。

障害者を医療的な観点からみると

  • 症状が出にくい
  • 体の不調を表現できず、 異常を見落としやすい
  • 異常があっても検査が困難であ る
  • 腸管麻痺で、排便障害が慢性化し、腸閉塞をきたしやすい
  • 褥瘡、転倒、誤嚥、低栄養などで病気のリスクが高い
  • 口腔内の清潔保持が困難で、肺炎などの呼吸器疾患を発症しやすい
  • 転倒で骨折、尿路感染症、風邪から呼吸器合併症をおこしやすい

といった特徴を有すると考えら れます。したがって特に障害者は健康診断を行い、定期的に身体の状態を把握することが必要です。

引用元:のぞみの学園ニュースレター69号

健康診断を受けることが難しい

また予防のために健康診断を受けることさえ、ハードルが高いといえます。

現在の日本では、知的・発達障害者への健康診断を始めとする検査や受診には障壁があり、十分な医療が受けられないケースがあります。さらに、知的・発達障害者の受診や健診には、多くの場合、マンツーマンの対応が求められ、人手や移動に負担が生じます。こうした条件が重なり、知的・発達障害者の健康診断の受診は、進んでいるとは言いがたい状況があります。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター73号

異常があっても検査・手術できない

健康診断と同様に、知的障害が重いほど、検査・手術・予後の治療が難しいと聞きます。先ほどの白内障のところでも、予後の対応ができずに治療をあきらめる人もいるとありました。

安静が保てず点滴治療や検査なども難しく、こだわりやパニックを起こしてしまうことが多い人は、治療することが難しいといわれています。特に強度行動障害がある人は、検査などの手立てがなく病気が進行している人もいます。

日常的にストレスを抱えやすい

最後の要因として知的障害があると、自分の思いや不調などを表現できずに、子どもの頃から孤独や我慢を強いられる立場にいるということです。集団の場や新しい環境では「困り感」を抱えやすい人たちでもあります。

周りは理解したいと思っても、うまく表現できないためフラストレーションがたまり、怒り、悲しみ、そしてあきらめ、孤独や絶望を感じ、それが自傷・他害につながる子もいます。

また娘のように感覚過敏が強い人は、毎日の生活の中で強い刺激にいつも悩まされています。

子どもの頃から、こういうストレスフルな生活をおくっていて、健康に影響が出ないわけがないと思っています。

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さらに最近は知的障害者の方も高齢化が進んでいます。健康寿命が短い知的障害者の人が長生きしたとして、長患いの期間が長くなるわけで、それが本人にとって幸せなのだろうかと考えさせられます。

2022年4月社会保障審議会障害者部会の高齢の障害者に対する支援についてによると、H20年とH30年の10年間での65歳以上の高齢者の割合を比べると46→56%に増え、その内訳は身体62→74%・知的4→16%・精神34→39%と障害者の高齢化が進んでいます。

国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(通称「国立のぞみの園」)の長期間入所している156人の利用者の平均年齢は70歳になり、今年も9人の利用者が亡くなりました。高齢化は待ったなしです。(略)

重度の知的障害者は比較的寿命が短いと言われていましたが、医療の発達に伴い私たちと変わらなくなった現状があります。ちなみに国立のぞみの園の最高齢者はなんと97歳!!になりました。

引用元:ぜんち共済 知的障害者の高齢化問題について思うこと

知的障害関係事業所利用者の中に60歳以上の占める割合は、毎年僅かずつ高くなっており、 今年は19.2%と前年度18.9%に比して0.3ポイント増加していた。利用者の年齢構成においても徐々に高齢化が広がってきているといえる。なお、今年の65歳以上の高齢利用者は全体で18,522人であるが、その内の73.4%(13,586人)は施設入所支援に在籍している。

引用元:日本知的障害者福祉協会 令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告

「施設」とは、障害児入所施設・児童発達センター・生活介護、自立訓練、就労移行、就労継続A型、就労継続B型、入所施設を全て含みます。

40歳代が一番多く、次いで50代30代となっています。60歳以上も多く、80歳以上の長生きの方もいます。

寿命が延びている

以前は、知的障害者の人は60歳くらいで亡くなっているといわれていました。データでも60代ー50代ー70代の順で亡くなる方が多いのですが、80代も113人と最近は知的障害者でも健常者と同じくらい長生きの人も少なくありません。

1年間の死亡者数は1,007人(前年度1,085人)であった。年代別で見ると「60〜69歳」が248人24.6%(前年度26.2%)と最も多く,続いて「50〜59歳」が233人23.1%(前年度19.2%),「70〜79歳」が216人21.4%(前年度21.7%)の順となっている。50代での死亡割合が高い傾向が続いており,今年度においては,ここ数年続いた2位70代,3位50代の順位が入れ替わっている。

引用元:日本知的障害者福祉協会 令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告


死因は病気が多い

今までの話の通り、知的障害者の死因は「病気」が多いという結果です。

死亡時の年齢階層別及び死因別の構成を表している。どの年齢階層においても,死因が「病気」の割合が最も高く,86.9%(前年度91.9%)であった。死因のうち,「病気」は60歳未満の年齢階層に占める割合(82.6%)よりも60歳以上の年齢階層に占める割合(89.9%)の方が高いのに対し,「事故」は60歳以上の年齢階層に占める割合(3.5%)よりも60歳未満の年齢階層に占める割(10.4%)の方が高かった。

引用元:日本知的障害者福祉協会 令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告

死亡場所は病院

最期の時を迎える場所の多くは病院です。最近は施設やGHでの看取りも出てきているようです。

死亡場所は、「病院」が75.8%と前年度76.0%より0.2ポイント減少したが、最も割合が高かった。次いで、「施設」が14.2%と前年度13.7%より0.5ポイント増加した。死亡場所が「施設」であることは、毎年度、一定割合存在している。

引用元:令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告

入所施設では高齢化が進んでおり、65歳以上は全国で約15,000人、早期高齢化(50歳以上)であれば約37,000人(日本知的障害者福祉協会調べ2021年)です。さらに、最期の時を迎える場所の多くは病院であるのが現状です。看取りの場所の希望を聞くことやそれを実現する体制に関しては未だに十分とは言い難い状況だと思われます。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター77号

多くの施設では高齢化が問題になっている

知的障害者の施設では、老化が早いことへの対応ができているのでしょうか。

日本知的障害者福祉協会の障害者支援施設に対する調査において「高齢化が問題になっている」と回答した割合は8割にも上っています。しかし「高齢化・老化が問題になっている」と回答した施設の内、高齢化・老化に対して「特別なプログラム」の用意については、約5割が「ない」と回答しています。

引用元:知的障害と認知症
参考:全国知的障害児者施設・事業実態調査

高齢化・老化が問題となっている人への対応で苦慮していることとして「日常生活行動における援助・介助」と「保健・医療ケア」が高率を占める結果となっています(全国知的障害児者施設・事業実態調査より)

国立のぞみの園の取り組み

では国の施設で、重度知的障害者への支援・調査・研究を行う国立のぞみの園では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

これまで研究検討委員会やヒアリング調査等により、高齢知的障害者を支援している事業所では、
認知症の症状等や身体面の機能低下見過ごしてしまい適切な支援が後手になっている事例があること
②そもそも、状態像の変化に気づく意義、方法を職員間で共有できていないこと等の課題があることを把握しました。
この課題に対応する糸口として、「高齢期前から看取りまでを概観できるマップ」の作成が重要になると考え、その作成に現在取り組んでいます。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター69号

認知症か病気か機能低下かを「客観的に判断」する指標が必要ですね

健康診断は年2回

聴力、視力の検査が難しいほか、がん検診の実施状況は、例えば、胃がん検診は13.9%、子宮がん検診は15.7%(2016年時点)に止まります。国民生活基礎調査の胃がん及び子宮がん検診実施率が4割前後(2016年時点)であることを踏まえると、考えさせられる数値であり、医療と福祉が連携して、この障壁を改善していく必要があります

引用元:国立のぞみの園ニュースレター73号

プログラムと客観的指標

のぞみの園で実際に行われているプログラムとその評価に使われている客観的指標です。

健康増進プログラム

2018年から入所者に日常生活の中に運動を取り入れる「健康増進プログラム」を導入

  • FIM(機能的自立度評価表)
    • ADL(日常生活動作)評価法で、運動項目13項目と認知項目5項目の計18項目を、それぞれ7段階で採点。点数が高ければ自立度が高いことを表す。
    • リハビリの成果を評価する際や、介護が必要かどうかを判断する際に使用する。

そのポイントは、特別な場所に行って運動を行うのではなく、日常生活の中に自然に体を動かす機会を取り入れた点です。運動の種類は複数(玉入れ、輪かけ、エアロバイク、ペットボトル拾い、バランスボール等)用意しましたが、利用者が最も受け入れやすく、長期に渡って継続実施できたものは玉入れと輪かけでした(略)

 FIMと身体機能・能力との関連性について評価回ごとに分析したところ、9回の評価全てに共通して、FIMの合計得点と起立動作能力得点との間に関連性がみられました。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター77号
高齢期前から看取りまでを概観できるマップ

2020年から
・認知症の症状等や身体面の機能低下を見過ごさないため
・状態変化に気づく意義・方法を職員で共有するために、ICFを用いて調査。

  • ICF(国際生活機能分類)
    • WHO(世界保健機関)が発表した「人間の生活機能と障害についての分類法」で6つの要素(①健康状態②心身機能・身体構造③活動④参加⑤環境因子⑥個人因子)で構成されています。
    • 今までは「医療モデル」「社会モデル」で考えるといわれてきた障害を、この2つを統合して個人と周囲の環境の双方から捉え理解することを目指しています。(参考:ICF(国際生活機能分類)とは?

その結果
①「健康状態」では、認知症については、60歳代に発症する方が大半で、ダウン症の方で40代から初期症状が見られたケースもあった。
②「心身機能・構造」では、歩行が不安定になる方は65歳からが大半だが、50 ~ 54 歳で歩行時に付き添い支援が必要となるケースもあった。また60歳代に自発性や意欲の低下が見られ、それにともない日中活動や作業への参加が難しくなるなど、健康状態や心身機能が低下することで ADL や IADL に影響が生じ、それによって③「活動」や④「参加」が制限されるケースがあった。
⑤「環境因子」では、親やきょうだい、友人との別れなどの人間関係や、居住場所の変化などが 40歳代以降起こりやすく、生活への影響が考えられた。

このように ICF を活用することで、高齢化に伴う様々な事象が相互に関係し合い、利用者本人の生活に影響を与えていることが見えやすくなりました。(略)

高齢化に伴い起こりうる様々な変化を整理し、早期に変化に気づくためのツールとなりうるものとして、意義のある取り組みであると感じています。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター69号
認知症ケアプログラム

2016年から早期発見を目的に全入所者を対象に認知症検査をはじめ
2022年から認知症・認知症が疑われる障害者にケアプログラムを導入

  • 日本語版DSQIID(知的障害者用認知症判別尺度) 
    • 第Ⅰ部「最も能力が高かった時の状態に関する3項目」第Ⅱ部「認知症に関する行動や 症状に関連する43項目」第Ⅲ部「全般的な変化に関する10 項目」の合計56項目で構成。
    • 第Ⅰ部は参考情報としての3項目なので判別する際の点数にカウントせずに、 第Ⅱ部の「元々そうである」「該当しない」を0点、「元々そうであったが低下してきた」「新しい症状である」を1点、 第Ⅲ部の「はい」を1点、「いいえ」を0点とカウントし、Ⅱ 部とⅢ部の合計が20点以上となると「認知症が疑われ」と判別する尺度となる。
    • DSQIIDの評価者は、少なくとも半年以上調査対象者の日常を知っていて、対象者の行動の変化を認識している人になります。特に研修の受講等を必要としないため、多くの施設や家庭でもご活用できる尺度です
  • 日本語版NTG-EDSD(知的障害者用認知症チェックシート)
  • NPI-NH
    • 認知症による行動・心理症状の状態を確認する検査
    • 妄想・幻覚・興奮・うつ・不安・多幸・無関心・脱抑制・易刺激性・異常行動・夜間行動・食行動の計12 項目で構成
  • 氷山モデル
  • ライフストーリーワーク
    • もとは家庭の事情で児童養護施設や里親のもとで暮してきた子供が、過去を整理し、現在未来へと前向きに生きていけるように支援する取り組みとして実施された
    • 現在では認知症高齢者にも広く導入されていて、認知症ケア学会等でも複数の研究報告がなされている。
    • また、知的障害者を対象にした先行研究も存在しており「中年期・高齢期の重度の知的障害者が過去を振り返ることができる」「利用者を深く知ることができる」「ワークを見た支援員の利用者理解の意識に変化が生じる」ことが確認されている
ターミナルケアと看取り

2021年からーミナルケアに関する取り組みを開始。知的障害福祉分野では、まだ障害者の看取りについての知見は乏しく、全国の施設・事業所からターミナルケアの在り方、指針の明示に期待が持たれている

 障害者のターミナルケアについても、意思決定支援の観点から取り組むことが重要です。一人ひとりの障害者の特性やニーズが違うように、ターミナルケアにおいても一人ひとり対応が違ってきます。その違いを知り、個々に合わせた支援を実行するためにはどうしたらよいでしょうか。
 個々の違いを知る方法として、人生会議(ACP =アドバンスケアプランニング)の開催などがあります。人生会議ではその人をよく知る支援員等が集まり、本当に本人が要望しているのはどんなことなのか、振り返る時間を作っています

引用元:国立のぞみの園ニュースレター73号

「看取り」とは、近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること(全国老人福祉施設協議会)いうそうで、明確な定義はないそうです。

2022年には本人・家族(成年後見人含)の同意が得られた2例の看取りを実施。

支援のギアチェンジ

高齢期支援の基本的な構えとして、若い時期と同じように「がんばれ」ではなく、「もうがんばらなくていい」と機能低下を認める支援に移行する時期があるのではないでしょうか。この「支援のギアチェンジ」ができないと、結果的に高齢期の知的障害者につらい思いをさせることになりかねません。そのことを真剣に検討すべき時期が必ず訪れます。高齢期支援が実現する価値は、今この時を大切に、利用者の満足、笑顔を引き出す支援であると感じています。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター73号

子どもの頃は、少しずつ「できるための支援」をしていくことが多いですが、健常者よりも早く老化か訪れ、機能が低下しているのこと気づかれず、「怠けている、やる気がない」などとマイナスのイメージを付けられ、いつまでも頑張らされ続けるなんて苦行でしかないです。

私は学校を卒業したら「教育期間は終わり」と思っているので、頑張らせるより今持っている能力を使いながら、足りない部分を支援者に助けてもらって生きていけばいいと考えています

ここで、高齢の知的障害者の問題として避けて通れない「65歳の壁」問題について書いていきます。

障害者「65歳の壁」とは

65歳以前から障害福祉サービスを受けていた人が、介護保険優先の原則により65歳になったことを理由に自治体から介護保険サービスの利用を求められ、介護保険に移行したことにより、今まではなかった利用負担の発生や利用時間の短縮、サービスの利用不可など生活に支障が出てしまう問題のことです。

障害者が65歳になると

障害者が65歳になると「第1号被保険者」となり、自治体から介護保険被保険者証が送られてきます(第2号被保険者の話は本題からずれるので省きます)。保険証はそのままでは使えず要介護認定を申請し、要支援1・2、要介護1~5に認定されてはじめて利用できます。「非該当」もあります。

介護保険優先の原則

障害者総合支援法7条では介護保険優先原則の規定があり基本的には介護保険が優先されますが、障害福祉サービスを継続したい場合は、継続が認められるケースがあります。

介護保険へ移行した場合、時間数・サービス内容が変わることがあります。

出典:厚労省社会保障審議会障害者部会(第127回)資料5より 

介護保険移行後に、今利用している障害福祉サービスを継続して利用できるかどうかは、住んでいる自治体によって差があります。また、自治体によっては障害者側が介護保険を申請しなかったという理由で、障害福祉サービスを全て打ち切るところもあります。
事前に相談室や事業所に確認しておくことが必要です。

私が住んでいる自治体では、介護保険移行後も就労継続支援B型と共同生活支援援助(GH)は利用できるそうです。また、相談支援もケアマネさんも両方利用できると聞いています。

「共生型」サービスを利用できるが。。。

2018年からはじまった制度で、介護保険に移行した障害者で、利用している事業所が「共生型」の指定を受けている場合、そのままそこの事業所を利用できる。

ただし、共生型は事業所にとっては報酬が低いこと、人員不足などが原因でなかなか広がっていないのが現実です。

私が住んでいる街でも2つしかないようです
「高齢+障害特性配慮+介護」と手がかかる利用者を受け入れてくれているのに報酬が低いなんて、どういうことですかね

あまり知られていない新高額障害福祉サービス等給付費

介護保険制度は利用者負担が1割の制度です。今後2割負担になるといわれています。お金のない障害者が払えるわけがありません。

そこで2018年からはじまった新しい制度で、65歳になる前5年間継続して特定の障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護・生活介護・短期入所)を利用していたなど条件がいくつかありますが、利用者負担を償還払いする制度ができました。それが新高額障害福祉サービス等給付費です。
償還払い:いったん費用の全額を立て替えて支払った後、申請により規定の額が払い戻される仕組み

65歳の壁 実例

実際に65歳になって介護保険との問題で起こった事例です。

  • 介護保険の申請をしなかったという理由で、今までのサービスを全て打ち切られた
  • 要支援の判定が出て、重度訪問介護が使えなくなった
  • 障害福祉サービスの「居宅介護」を申請したら、介護保険優先といわれ「訪問介護」申請するも要支援の判定のため使えなかった
  • 今まで仕事でヘルパー同行支援を利用していたが、介護保険移行後に使えなくなった
  • 「訪問介護」が優先されるいわれ、「移動支援」で日用品の購入ができなくなった

参考:“次期”介護保険改悪と障害者65歳問題

この障害者65歳の問題は、現在も各地で訴訟が起こっています。障害福祉サービスの支給決定の権限は市町村にあるため、自治体によって格差が大きいことが知られています。

今まで障害福祉サービスを利用していて障害区分認定が5・6だった方が、65歳以降介護認定をうけた場合、体は動くため要介護になることなく、区分の軽い要支援1・2になることが多いといわれています。

区分が軽くなると今まで使っていたサービスが利用できなくなる、時間が短くなるということが起こります。

もともと介護保険優先の原則は廃止される予定で、国は2010年にその合意文書も作っていました。しかし、現在もそれは実現されていません。↓

一般的に8050問題といわれているのは「80代の高齢の親が50代の引きこもりの子どもの面倒を見ること」をいいますが、障害者の8050問題は、入所施設やGHの不足・(親が子の世話をする)老障介護・(子が親の世話をする)障老介護の問題を抱えていることをいいます。

また中にはシングルの家庭で、子どもの障害年金や手当をあてにしないと生活できない家庭もあると聞きます(経済的依存)。

あと心理的にかわいくて・かわいそうで・心配で離れられない親も大勢います(心理的依存)。私もこれです。

高校を卒業したらすぐGHに入れるという親御さんもいます。親子でそれが可能なら本当に素晴らしいことだと思います!

6030の内に

よく聞くのは、親元を離れるのは「子どもが何歳になったら」と子どもの年齢で考えるのではなく親の年齢で考えないと「親の両親の介護」「自分や家族の病気」などと重なり身動きが取れなくなるといいます。

それを考えると親が60代の内までには別々に生活するのが一番理想だと思っています。

子ども側にとっても、自閉症や発達障害の人は「環境の変化に弱い」という特徴がありますから、その上、老化がはじまって高齢になってからの環境の変化は、かなり辛いのもだと想像できます。

簡単に会いに行けないGH

最近このような記事を見ました。強度行動障害と重度知的障害と自閉症のある方のGHは本当になく、東京の自宅から簡単に会いにいけない青森のGHに入居したという記事です。見つかったというだけ正直親御さんは安心されたでしょう。それほど厳しい現実です。

自閉症の人は感覚が鋭い人が多いですから、慣れない環境はもちろん、その地域の気候や食事にも慣れるのに苦労するだろうと思います。

できれば若いうちに近くで探したいと思っていますが、精神障害の人、軽度知的障害の人が入れるGHは比較的ありますが、中・重度で自閉症があると、「自閉症の支援」自体に理解や経験がないGH多く、探すのに苦労すると聞いています。

「終の棲家」といっていいのか

以前セミナーで聞いた話ですが、GHや施設に入所したときに、親は安心して「あなたはここで一生暮らします」と子どもに言ってしまう人がいるが、それは避けた方がいいというお話でした。

障害の重い子ほど選べるGHや入所施設はあまりありません。しかし、あわない人間関係・どうしても刺激になってしまう人・場所など、その人にとって厳しい環境のところに入ってしまう場合もあります。特に人間関係はしばらく暮らしてみないとわかりません。なのにそこから一生出られないと言われるのは地獄に他なりません。

また(ずっと前に受けたセミナーで記憶がおぼろげなのですが)知的障害のある人にその地域にある複数のGHを数か月間試させて、最終的に本人にどこがいいか決めさせると、試すという経験ができたことで知的に重い人でも意思決定ができたという話を聞いたことがあります。

私は、自分の思いをうまく伝えられない娘が、ストレスで心の病気・体の病気・二次障害になるくらいなら、「GHに入っても合わないこともある、合わなければまた探す場合もある」と、どこか頭の片隅において事業所を探そうと思っています。

8050の問題に関しても後日また詳しい記事を書ければと思っています

病気の予防

本当ならはじめに書いた「老化の原因」のをやればいいのですが、それも障害特性によってできるところ、できないところがあります。障害は努力や根性ではどうにもならないから「障害」なのです。

先ほどの白内障の表を見て、白内障の以外の病気の予防につてい個人的に思うところを書きたいと思います。

水虫・白癬菌について

60代の水虫が40代で26.5%と高いのは、足は汗をかきやすいけど洗いにくいという理由と、GHや施設は毎日入浴できるところは少ないという現状で、清潔が保ちにくい状況だからではないかと思っています。また糖尿病などで免疫が弱くなっている人は水虫などの菌に感染しやすくなります。
そして娘の入浴を見ていても指の力が弱いことで、角質やヌメヌメを洗い落とせていないと感じます。

娘にはフットブラシを使って足のケアを教えています。

胃炎・胃潰瘍について

胃炎・潰瘍・胃がんは、ピロリ菌が関係しているといわれています。また若い人でも胃がんになる人がいます。私の父も胃潰瘍の原因がピロリ菌でした。
胃カメラ検査が無理でも(自費になりますが)血液検査でピロリ菌検査ができます。夫も胃炎の症状があり、血液検査でピロリ菌に感染していることが分かり、抗生物質を1週間飲んで菌を除去し終えました。扶養に入っている人は会社の健康保険組合などで安く検査できる場合もあるようですので調べてみてください。

高血圧について

娘は以前、婦人科を受診して血圧を測ったときに白衣性高血圧と分かりました(家では正常値)。ですから、家庭血圧を測ってくるようにいわれているのですが、もともとの不安症ビビりなのもあって、安静時は低くても、誰かが家に訪ねてきたときなどに、血圧が上がることがわかりました。

今の歳で血圧が高くなりやすいと分かったことは良かったです。今は血圧が上がらないように気を付けて対策をしています。家に血圧計がある人はお子さんの血圧を測ってみるのはどうでしょうか。

病院に慣れさせる

知的障害のある子を病院へ連れていくのは、本当に大変です。しかしこればかりは、小さい時から視覚情報などその子に分かりやすいように見せて納得させたり、病院へ協力もお願いして、慣れさせないといけないと思っています。

病院へ行くことは大切なことだと「ご褒美とセット」で繰り返し教えていくしかないと思います。

人は、高齢化すると疾患に罹るリスクが高まります。このリスクは、アンチエイジングに関する取り組みのように、早期に発見し、対応すれば下げることもできます。
 また、知的・発達障害者本人が、受診や健診に慣れる支援も必要ではないかと考えています。特に、採血やレントゲン、心電図は、比較的どこの医療機関でも受けやすく、様々な疾患の発見や予防に繋がるほか、そのほとんどが身体に変化が見られたときに最初に行われる検査となります。できるだけ若い時期から、構造化等の環境的配慮を行い、ストレスなく受診や健診が受けられるよう備えておきたいものです。

引用元:国立のぞみの園ニュースレター73号

今は検査内容を分かりやすく伝えてくれる病院が作った動画もたくさんあります。
採血からMRIまで、予行練習としてお子さんにあったものを見せてもいいと思います。特に次の動画はMRI内の音を分かりやすく教えてくれておすすめです。

体を動かす

学校を卒業した後にいかに運動習慣を身につけさせるかがカギになると思っています。自閉症の人はルーティンにしてしまえば、コツコツできる人が多いのでその特性をうまく使っていくのがいいのではないでしょうか。

運動でなくても、その人にあった体を動かす行動があればいいと思います。

バランスボール・トランポリンなどの運動器具を使ったり、散歩でも。

模倣が苦手なお子さんも、支援学校でラジオ体操を繰り返しやっていてできる子もいるので、ラジオ体操もおすすめです。NHKのテレビ体操も「軽いストレッチ+ラジオ体操」を毎日放送していて真剣にやると結構汗をかきます。

ゲームができるお子さんでしたらフィットネス系ゲームもいいのではないかと思います。娘にやらせようか考えています。

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娘の場合は

娘には10歳から「家事」を少しずつやらせてきたので、大体の家事はできています。家事もカロリーを消費しますから体を動かすという点ではいいと思います。家事ができるということで、通所先でもモップ掛けやテーブル拭きなどの役割を与えてもらい頑張ってやっています( •̀ ω •́ )✧

あとは模倣が得意で体を動かすことも好きなので、ダイエットダンス動画の好きな音楽のものを楽しんでやっています(家事と同じで運動したあとはお金を渡しています)

ベースラインを取っておく

ベースラインとは、知的障害者その人の元々の認知機能で、認知機能が落ちる前の健康なときに、その人がどう行動・反応するかを記録しておくことで、認知機能が落ちた時に、健康だった時と比べて評価することが可能です。(参考:知的障害と認知症)

ダウン症の人は若くして認知症が訪れますから、30歳までにはベースラインを評価し、記録することが推奨されています。

この評価は、30~50歳までは2年ごと、50歳以降は毎年行う必要があるそうです。

診断書・思い出の記録の保存

ベースラインと同じく、若い時の発達検査の記録なども保管しておくと、どれくらいできなくなったかの評価として使えるといいます。

また認知症に関しては、症状が進むとご本人が古い記憶(幼かった時の記憶)に戻ってしまうため、昔の幼かった時の思い出の写真などを保存しておいて、本人に見せると情緒が安定することもあるようです。

健康診断を受ける

知的障害者の健康診断は、就労施設の嘱託医というのでしょうか。かかりつけ医の先生のところへ行き、簡単な健康診断をする形が取られていることが割と多いようです。

娘が利用している事業所は、母体が大きい団体で重度の人も多く、団体としてかかりつけ医がいて、成人の障害者の人はそこで健康診断を毎年受けられる体制が取られているそうです。また巡回の看護師さんも定期的に健康チェックに来るということです。

知的障害者対応の健康診断施設

身体障害者の方向けの健康診断はあるのですが、知的障害者となるとすごく少ないです。

いくつか探してみました。この他にも、もっと丁寧に探すとあるかも知れません。
地域限定の情報などはネットには載っていないので、事業所や相談室さんに聞いてみるといいと思います。

知的障害者対応の健康診断施設

1)社会福祉法人 旭川荘(岡山県岡山市)旭川荘療育・医療センターにおいて、重度の知的障害・身体障害者の皆さんにも受けやすい簡易的な人間ドックを実施しています。(平成31年4月から)

2)国立のぞみの園(群馬県高崎市)知的障害者を対象に健康診断(のぞみの園健診、特定健診など)を行っております。お気軽にご相談ください。

3)大分県厚生連健康管理センター(大分県別府市)知的障害者も対象です。

4)NPO法人すぎなみ障害者生活支援(東京都杉並区)杉並区の住人だけ対象です。

関係者への引継ぎ

最後に、親が亡くなる前には関連施設の人に集まってもらって、引継ぎが必要です。(その前から定期的にやっておくことが理想といわれています)先ほどのベースラインや発達検査の結果、思い出の写真なども渡して、口頭だけではなく記録として残すことが大事なのだそうです。

  1. 日本知的障害者福祉協会令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告
  2. 障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究
  3. 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園ニュースレター
  4. 内閣府令和5年版障害者白書 全文(PDF版)
  5. 対話から始める 脱!強度行動障害
  6. 知的障害と認知症
  7. “次期”介護保険改悪と障害者65歳問題
  8. 「親なき後」をみんなで支える
  9. 抗精神病薬の副作用管理についての注意点
  10. MSD第2世代抗精神病薬
  11. ぜんち共済知的障害者の高齢化問題について思うこと
  12. 高齢化する知的障がいのある人の退行性変化とその対応ポイント
  13. 社会保障審議会障害者部会高齢の障害者に対する支援について
  14. 高額障害福祉サービス等給付費等に関する支給認定について【平成30年6月版】
  15. 厚労省社会保障審議会障害者部会(第127回)資料5
  16. 高齢期の知的障がい者支援に関する現状と課題

知的障害者の老化が早いのなら、知的障害者のいる施設やGHは、「障害の支援」と「介護」の2つの役割が増えてくることになります。

「障害の支援」と「介護」という別の知識と経験が必要なわけで、介護も見据えて障害者のGHを建てる事業所はそれほど多くないのではないでしょうか。

娘が知的の特別支援学校(特別支援学校は聾・盲・身体・知的とあります)にいるときには意識しませんでしたが、学校を卒業し就労の場に投げ出されると、圧倒的に知的障害者が少ないという現実を知ることになります。

内閣府 障害者白書R5年度版によると、障害3区分の割合は、人口1000人あたりにすると身体障害34人・精神障害49人・知的障害9人と明らかに知的障害者の人口が少ないのです。

そのため就労やGHの場には精神障害者が多く、「知的障害者に対応できる」とはいうものの「知的障害の自閉症に対応できる」事業所は本当に少ない。精神障害の人が知的障害の人を見下し、肩身の狭い思いをしているケーズもあります。私は精神障害と知的障害の事業所も分けた方が、お互いにとって幸せなのにと思っています。

老化が早く介護も必要となってくる知的障害者のGHが増えないのは、今後も変わらないように感じます。

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